少年のセカイ
情
第1話 始まり
平成十六年七月二十日東京都に普通の少年が生まれた。
かっこよくもなくブスなわけでもない、何とも言えない少年だ。
母は美人、父は努力家、なんの不自由もしていない…と思う。
兄弟はたくさんいた、兄二人、姉二人、私は三男だった。
きっと私は恵まれているのだろう、いや恵まれている。
今もそうだが生活に不自由は感じていない。
私が唯一恵まれていないのだとしたら、私が三歳の頃、母が死んだ。
死因は『自殺』当時三歳の私は理解などしていなかった。
今でも覚えているのは、母と共に動物園に行ったことだ。
富士サファリパークだったと思う、今となっては動物園は嫌いだ。
なぜなら、母との思い出を思い出して悲しくなってしまうからだ。
決して、母が嫌いなわけじゃない
母は厳しいながらも良い母だったと思う。
ならなぜ母は死んだのか、私には理解ができなかった。
最近になって、母方のおばあちゃんが教えてくれた。
父は母が自殺する翌日、女の人と旅行に行く予定だったという
それを知っていた母は、行かないでほしいと話していた
父はそれを無視していこうとした、だから母が自殺した。
そんな理由だった。そんな理由で母は当時三歳の私を置いて天国へと旅立ったのだ。
きっと他にも理由はあるだろう、思い当たる節は多い。
関係ないが、気になる人の為に書いておこう。
一つ、兄弟に障害を持っている子がいた。
一番上の姉である、障害があるのは仕方がない、私はそう思う。
姉の性格がひどかった、精神障害や身体障害を持っていた、精神障害を持っているからでは済まないほど酷い姉だ。
幸いと言って良いのか、私は特に持病や障害はなかった。
一つ、家庭が複雑だった。
一番上の姉と兄が母の連れ子だったのだ。
母と父両方と血のつながりのある兄弟は、次男の兄と、次女の姉だった
母はきっといっぱい悩んで、苦しんで、悲しんで、結果『自殺』を選んだのだろう
私にはわからない、私は死ぬ勇気がない、死にたいと思ったことは数えきれない。
どうして父と母両方いないんだ、なんで私だけと。
もちろん両親いない方もいるだろう、その方からすれば私のこの悩みは『贅沢』になるのだろう。
父一人でも私たちを育てていくには十分な収入があった。
母がいなくなり長女は引きこもり、次女は私や兄の面倒を見た。
当時小学生の姉には辛かっただろう。三歳と五歳の面倒を見るのは、私だったら投げ出していたと思う。母が亡くなって一年たった頃、父の母(父方のおばあちゃん)が面倒を見てくれるようになった。
それから一年後、私(当時五歳)は次男(当時七歳)に誘われ万引きをした。
もちろんバレて捕まった、父が迎えに来て叱られた。
当たり前である、当時の私には何が悪いか、わからなかった。
私はきっとそこで、普通の家庭とは何かが違うと思った。
小学生になり、価値観も固まり始めた頃、友人の家庭がうらやましかった。
両親がいて、運動会には親二人来るのは当たり前。
私の親は行事ごとに、ほぼ参加しなかった。私にとっての当たり前であり、基本だった。
これもきっと『贅沢』なのだろう。
私は確かに愛されていたと思う、しかし他の家庭はもっと愛されて、もっと楽しくて、もっと満たされるものだと、私は知っていた。
これはきっと『強欲』なのだろう。
私は汚い人間だ、自分より不幸な人を見て満たされる。
自分にはないものをみて『嫉妬』する。
私には『個性』がないのだろう、私は人の『個性』を見ては羨ましいと思う。
他者から見て、私に特別な『個性』は、あるのだろうか。
否、ないと思う、人に羨ましいと思われることはない。
環境に恵まれていて、羨ましい?
違う、この環境はきっと私『怠惰』にしてしまった。
ついでにそれは『個性』ではない。
私の父が『努力』をし達成したことだ。
私が羨ましいのではなく、父の『努力』の結晶を羨んでいるのだろう。
それは、醜く、無様で、酷く滑稽だ。
こう言っている私も、父に『尊敬』と同時に、父の『個性』に『嫉妬』している。
私は、今も幼い、父の血の滲む『努力』も、知らない、親子なのに父の『個性』を理解しながらも、行動に移さない。
私は、一人の人間として、ゴミなのだ。
他者を羨んで、『努力』を怠り、一日を無駄に浪費している。
ここで豆知識を挟もう、人の平均寿命は84歳だといわれている。
人間生きていられるのは日数にして、30660日だ。
私は約6205日生きている、一日無駄にしては生きている。
目標もなく、ただ『努力』している人を嫉んで自分は『努力』しない。
私は輝けない。やり直せるなら、生まれたての赤子になりたい。
そうすれば目標を持ち、『努力』し誰よりも輝く。
こんな言い訳を毎日しながら生きている。
環境のせいにし、自堕落に生活している。
だから私は叫ぶ、『助けてくれ』と。
少年のセカイ 情 @tirupa2526
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