夜の田園風景。読み進めているといつしか田園の中に身を置いている。物語の登場人物と共に夜月の光を目にし目の前を走る子供の姿まるで、物語の中で物語を体感しているかのような気分に浸る。美しい景色の中、田んぼの中に生きる虫たちの生活する音。さわさわと流れる夜風。読んでいて、気持ちいい懐かしい空気な触れます。
耽美的な色合いの深さと、不思議な懐かしさがいつまでも心に残ります。風景そのものの美しさをこれほどすっきり描いた作品は意外に少ないでしょう。革と恭佳の触れ合いとすれ違いの、暖かくも寂しい詩的なニュアンスが絶妙でした。少々言葉が分らなくても、子供たちに読んであげたくなります。