第2話 幼い頃。
夏休みになった。
私は、6月にあった推薦入試で専門学校への進学を決めた。地元にある、被服系の専門学校だ。
だからこの夏、高3だからといって毎日勉強をして過ごすわけでもなく、ただのんびりと、テレビを見たり、スマホで動画を見たりしていた。
私には、両親がいない。いや、いないと言ったら語弊があるのかもしれない。
私の両親は私が小学6年生の時に離婚。父の暴力が原因だった。父が家を出ていき、母は水商売のバイトで夜は帰ってこなかった。そして、気づけば、朝も昼も帰ってこなくなっていた。
中学3年生になってすぐだった、家に帰ると知らない男の人と母がいた。
母は私に厚みのある茶封筒を渡していった。
「これでこれから生きていきなさい。あなたにこの部屋もあげる。莉久が買ってくれたのよ〜!」
その言葉を最後に母とその莉久という男の人は隣の寝室に篭もり、いやらしい音をたてていた。
気味が悪くなった私は、部屋から出て、近くの公園へと泣きながら走った。
父のせいだ、母のせいだ。何度もそう思いながら涙を流した。悔しかった。母を目の前にして金を貰わないといけないのは。こんなもの要らないって言って顔に投げつけたかった。でも出来なかった。それまでご飯もろくに食べていなかった。給食費だけ、自分のお小遣いや母の財布から盗んで出して。給食だけしっかり食べた。母からその事がバレるとよく殴られた。私は公園のベンチで、今までの辛い日々を思い返しては涙を流していた。
「…なぁ、おい!凛子!!!」
「え!?」
「なんで泣いとるん!?」
「怜央…」
その時、駆けよってきてくれたのは紛れもなく、怜央だった。
「ちょっとね…なんでもないの」
「なんでもないわけないやろ?」
この時に好きになったのかもしれない。人は誰しも弱い時に近寄られる異性に恋心を寄せるものではないのだろうか。でも、それだけじゃない。きっと、私は公園に今出たら、もしかしたら怜央が来てくれるかも…と期待していたのかもしれない。誰かに慰めて欲しかったから。
「ごめん…お母さんが…」
すると怜央はハッとした。
家が隣だから私の家庭状況は分かっているのだろう。そして、すごく、悲しそうな眼をして、私の頭を
撫でた。
こんなことは初めてだった、誰かに認められたかのような心地。なんて素敵な時間なんだろう。
「そうか…辛かったなぁ。」
怜央はそう言った。
辛かった。死んでしまいたいと何度も思った。でも、リスカとかは1度もしなかった。それは、あなたが隣に住んでいたからなのだろうか。なら、私が今ここで生きているのは、彼のおかげだ。私は彼のために生きている。
プルミエ・ラムール 薄紫式部 @renorin
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