ビターチョコレート
大盛ぺこ
ビターチョコレート
あのコがいなくなった。
さよならも、愛してるも言わずに。
ただただ、僕を置いていった。
僕が泣き虫なの、知ってるくせに。
君がいなくなったら見つかるまで探しちゃうの、知ってるくせに。
君は、チョコレートが好きだった。
ふんわり甘いミルクチョコよりも、甘酸っぱいイチゴチョコよりも。
君はビターチョコが好きだった。僕らがこんなふうにお別れすること、知ってたからなのかな。
今日、冷蔵庫の中に黒いパッケージのビターチョコを見つけたよ。
パッケージの裏にはメモが付いてた。君の字だった。なんでだろう。目が潤んで、上手く読めないや。
『バレンタインおめでとう』だって。
そうか、今日はバレンタインだったのか。
だとしたらいじわるだな。僕、もう君にお返しをあげられないのに。
それもこれも、全部君のせいだよ。
口に入れたチョコは、ほろ苦い味がした。
ぽろぽろ涙がこぼれてく。心なしか、チョコと同じ味がしたような気がした。
よく君は「私なんかが居なくても、世界はあんまり変わらないよ」って言ってたけど。
僕の世界は、僕の心は。
とっくのとうに君のものだったのに。
今は君を失って、ぼろぼろに、崩れ落ちてしまったのに。
もっと僕が、もっと君を愛していたら、こんなふうにならなかったのかな。
後悔って、苦くて辛くて、とっても胸苦しいんだね。
今度そっちに行ったら、絶対文句言ってやる。
そして、思いっきり抱きしめてあげるからね。
それが、僕の、ホワイトデーのお返しだよ
ビターチョコレート 大盛ぺこ @usotukiusagi
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