第3話 謎の人魚【イレイナ】

水から跳ね上がったその女性の顔は美しく、僕の目は一瞬にして奪われた。

そして、その跳ねた先に居たのは……

(あっ僕の方にきてる)

「ドゴッ!」

「い、痛ってーーー!!」

彼女は跳ね上がったついでに僕にいきなり頭突きをかましてきたのだ。しかも彼女の頭はその美貌からは想像のつかない石頭であり、たちまち僕は夢の中へと倒れ込んでいった。



「あらっ?起きましたわ!」

「うぃ、うわーーー!!!!」

思わず変な声が出てしまった。

「ど、どうしたんですの!?そんなにびっくりなさって!?」

「に、ににに、人魚が……………喋ってる!?」

「失礼ですわね!これでも私は知性ある生き物ですわよ!あなた達のような低種族とは違って!」

「自分たちを知性ある生き物呼びして!しっ、しかも僕たち人間に知識がないだって?!まるで自分たちのほうが上の立場にいるような!?」

「それはそうですよ。だって私達種族は人間相手にあの〈世界審判〉で………いやっ、この話はやめにいたしましょう」

「疑問しか湧かなせないような返答だなぁ。」

語尾の割には酷いことを言うものだと思ったがそんなものよりもやはり彼女が人魚であることのほうが先に先にと出てきてくる。湧き上がる好奇心をできるだけ抑えながら僕は質問を続けた…


いくつかわかった事がある。

・彼女の名前はイレイナ

・年は276歳(人間で言ったら16歳らしいがそれを指摘したら

(レディーに年齢で判断をつけるなんて最低ですわ!)

と、怒られてしまった)

・彼女は人魚の国【ディープセントラル】から来た人魚であること

・人間とは昔因縁があった事


以上だ。これ以上聞いたら、

(あなた、どれだけ一方的に質問する気ですの?)

と、静かに威圧された。



その後、しばらくイレイナに質問攻めにあったが、さっき僕もやってしまった身だから文句は言えない。

だけど、イレイナは相当箱入り娘だったようで、結構プライベートなところまで質問してきたことには驚いた。


「それで、これからイレイナはどうするんだい?」

「急に呼び捨てで呼ぶのね…まぁいいわ、とりあえずあなたについていこうかしら」

「えええ!!なんで僕なんかに?!僕なんて文無しのダメ男だよ?!」

「そんなんじゃないわよ、ただ、私は人間の世界を知らないからあなたに案内でもしてもらおうかなと思っただけですわ」

「嫌だとしてもさぁ!……

「うるさいですわよ!男のくせに!!」

「パシーン」

僕が右往左往しているとイレイナがかなりキツめのツッコミを入れてきた。痛い。



いつまでも深夜にこうしてはいられないのでとりあえずイレイナの顔と足を隠して宿に戻ることにした。



━━これが僕の数奇な運命の始まりとは知らずに………

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オハナシノくに ゆでそばのきりる @kiriru

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