第4話


 その後、藤原が意識を取り戻したときには、すでに日が傾いていた。傍らでは神崎が、近所のコンビニで買ったらしいワンカップをあおっていた。

「はっ……トカゲちゃん! トカゲちゃんは!?」

「もう名前忘れてるぅ! タマちゃん、トカゲは動物園に引き取ってもらったよ!」

「そんな……」

 ベッドの上で上半身を起こした藤原は部屋中を見渡し、ペットの姿がないことを悟ると悲しげに目を伏せた。

 神崎が連絡をとったのは、アニマルハンターとして日頃から懇意にしている、危険生物専門の動物園だった。藤原が気絶している間に、トカゲはそこのスタッフに引き取られていったのだ。

「そんな……トカゲちゃん……」

 がっくりと肩を落とす藤原の前に、神崎はスマートフォンを突き出した。

「大丈夫。ほら、見てみ」

 画面に表示されていたのはツイッターだった。どうやら動物園の公式アカウントのようだ。あの巨大な青いトカゲの写真が投稿され、「新しい仲間が増えました! ヒトクイゲコトカゲのアリスちゃんです! とーっても元気でかわいいんですよ~」という文が添えられていた。

「ヒトクイゲコトカゲなんているんだね……」

「女の子だったのか、トカゲちゃん……」

 藤原はスマホを眺めながら、頬に流れる涙をぬぐった。大きな檻に移されたトカゲは、心なしかのびのびとした表情をしているように見えた。

「そうだね……狭い部屋で暮らすより、きっと幸せだよね……」

 神崎は泣いている親友の肩を叩き、もう片方の手でフタを開けたワンカップを差し出した。

「今度一緒に会いに行こ、タマちゃん」

 彼女の言葉に、藤原は嬉しそうにうなずいた。


 ちなみに藤原のアパートの近くの公園に、ヒトクイゲコトカゲの幼体をわざと放った者がいるのだが……その黒幕である秘密結社「青蜥蜴」と神崎ひかげとの新たな闘争は、また別のお話。


(おしまい)

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神崎ひかげVSヒトクイゲコトカゲ 尾八原ジュージ @zi-yon

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