端末への着信。

 彼から。

 耳にあてて。

 待つ。


紗來さくら


 私の名前。さくら。


「うん」


『今。いいか?』


「うん」


 電話先の沈黙。紅い空。眺めていた。星は、ほんの少し。


『好きだ』


「うん」




 電話が切れた。

 空。

 にじんで、よく見えない。泣いているのかもしれないと思って、目を一度閉じる。頬に、かすかに涙の感触。

 もういちど、目を開く。

 空。

 明るくなってきている。

 そのなかを、一筋だけ。

 ゆっくりと。

 流れ星が。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

流れ星が逃げる前に(f) 春嵐 @aiot3110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ