「ちゃんとした」復讐譚。こういうのが読みたかった!

昨今の「小説家になろう」や「カクヨム」で連載されている復讐モノは、中途半端な作品が非常に多い。身近な人を殺されたり、自分も死にかけたりしたというのに、ちょっと文句言うだけで終わったり、顔面1発殴ってチャラになったり、何故か打ち解けて仲間になったり、恋人になったり、偶に思い出した様に「忘れるな。俺はお前を許さない!」とか言うだけのツンデレと化してたり。路線変更し始めるのが復讐相手何人か殺した中盤からだったりするから余計に困惑する。これまで奪ってきた命は何だったのさ…?と思うこと請け合い。
ですが本作は違う。きっちりと復讐していきます。途中でヘタレないんです。全てが終わった時、漸く止まっていたリュージの時間が動き出すのでしょうね。これからの帝国編も楽しみです。
不満点としては一つだけ。アストレア王女がカイゼル神父を擁護した点ですね。要約すれば「品行方正な人物のたった一度の過ちなのだから赦せ」となりますが、そこは「そのたった一度の過ちで人の人生が喪われても許せというのか」と言う事に他ならない。個人的には民衆の評判とかそんなのは関係の無い話で。アストレアに余計な事は言わせて欲しくなかったです。
【追記2021.3.29】アストレアは為政者として全体的な視野から物事を見るでしょうし(寧ろ見なきゃいけない)、リュージは個としてその一念を貫き徹すべく突き進んでいる。そりゃ確かにその2つのベクトルは交わりません。交わりませんが…いつか、全てが終わったら、その時は…と願ってやみません。

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