「コーヒーと恋愛は熱いときが最高である」これはドイツのことわざであったでしょうか。この物語のコーヒーは、熱いです。
ただし、薄い。
まずいコーヒーでも、全くコーヒーがないよりは良いと、どこかの映画監督も言ってたけども。
甘酸っぱい少年の青春の1ページに刻まれる、苦味たっぷりの出来事。準備室は彼の避難場所であったけど、場所そのものが少年を救っていたのではなく、実際に匿って癒していたのはそこの主である一人の教師。
コーヒーを小道具としてうまく扱っている物語で、何故コーヒーが薄かったのか、その理由に複雑な心情が絡んでいます。
大人と少年、男と男、教師と生徒という三重の壁がありながら、気さくで軽妙なやり取りで、なんとなく不思議な関係を培う二人。
濃い(普通の)コーヒーが出されるその時は、新たな関係に変わるとき。
幼馴染の少女を含め、三者三様の想いと考えが交錯し、ひとつの出来事に対し、それぞれの視点側でも描かれているので、全員の立場の気持ちがわかります。性別をあえて意識せずに、それぞれの立場とその行動の結果がどうなるか、という読み方をするのも良いかもです。
読後感が良く、軽快な筆致でさくさく読めるおすすめの一作。