第9話ダメヒロイン

俺は楽しみすぎて、待ち合わせの十五分も前からいたのに。待ち合わせ時間はデートの一部。スポーツで言うとウォーミングアップだと脳にいいつけているうちに、時刻は十四時ちょうど。

流石に一時間も待たさせると、待たされている自分に叱咤したくなる。

そう思い、家に帰る道中。


いつも感じる視線が身体を刺すように伝わってきた。


もう分かる。


その感覚がどのようなものか、誰から発信されているのか。俺は身体を百八十度回転させ、十メートル先にある電信柱を目指した。


『見つけた』


心拍数が上がれば息も荒くなる。

だから、言葉が上手く伝えられない。

「おい、ハァハァ、今日、ハァハァ、どこで何やってた、ハァハァ」

脳に酸素が回ってないのが視界の狭さで分かる。

「ねぇ、呼吸が落ち着いてから喋りなさいよ。まともに喋れてないでしょう?」


なんでこいつはこんなにも、堂々としてるんだ?

だかまぁ、一応だ。仕方無く坂月の提案に乗っ取り

呼吸・心拍数が収まるまで膝に手をつけた。


・・・心拍数が正常まで収まり、呼吸音は町中の音に紛れた。


「なんで今日来なかった?」


今のこの状況はよくアニメであるシーンに似ている。緊迫した空気の時だけにある『水滴が地面に「ポチャン」と落ちるまでのあれ』その短いようで長いような状況は互いに緊張しているから成り立つ。


だから、坂月も緊張しているはずだ。


「あなたは何を言っているの?私は今日の集合時間の十五分前に来たあなたよりも早く集合場所に居たわよ」

「嘘つけよ。俺はしっかり駅前の時計台の下にいたぞ」

「あなたが、駅前の時計台の下にいたのも知っているわ。だけど、誰がいつ時計台の下に集合なんて言ったのよ」


確かに言ってはない。言ってはないが、、デートの時の待ち合わせ場所は時計台の下集合がトレンドだろ。


「俺を見つけた時点で俺のところまで来てくれてもいいだろ?」

「何か勘違いしているようで申し訳ないけど、私の目的はあくまでもあなたの私生活のストーキングよ。でもあわよくば・・・・。いやなんでもないわ忘れてちょうだい。」


『うわ〜やられた』


完全に忘れていた。坂月結葉が普通の女の子じゃないことを。坂月の容姿は男女が憧れるものがある。

けれども、その憧れの存在の裏の顔はストーカー気質で変な性癖がある。”ド”が付くほどド変態野郎だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラブコメ主人公になりきれないラブコメ主人公 ひいらぎ @Hiiragiii

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ