第8話ダメヒロイン誕生【4】

「うっ・・確かにそうね、勿体ないけど醜態を晒すのだけは避けたいもの」


いや、それに関してはもう遅いぞ。冷静に、坂月に対してツッコミを入れる。


「あれ?あなた、カバンにつけていた駅前のガチャガチャのストラップは?」


コイツ、ストーキングスキル完ストしてるんじゃねーの?


おっとまた過ちをおかしてしまいそうだった。


この方、おストーキングおスキルお高いこと。


またしても、坂月に対して優しくツッコミを入れる。


「ほんとだ、マジのやつじゃんか」


「なによ、信じてなかったの?」


「90の疑い、10の信用だな」


「うふっ、いや、何よそれほとんど疑いじゃない」


「ん?まぁ帰りながら来た道たどってくるよ」


「私も行くわよ」


「珍しいこともあるもんだ。明日は大雨だな」


「うふっ、辞めてちょうだい」


「ん?」


街灯に集まる虫の少なさは、今は冬だと自然が訴えているように感じる。


坂月は寒さに耐えるべく、両手を摩擦で温めようと手を擦りつけている。


「とりあえず、来た道たどったけどなかったな、家でも探してみるよ」


「そうね、そうしなさい。じゃあ私はこっちだから」


「あぁ、ありがとう」


そう言って、坂月は駅の方へと歩いていった。



坂月との約束の日まで、特には喋ることもなく顔も合わせることもなく、

刻一刻と時間は過ぎていった。


やはり、大方予想はしていたが、坂月のストーカーは続いていて、

最近は”見られている”というのが分かるようになっている。


ストーキングは俺で妄想と同じ、ルーティーンのようなものかと無駄に共感してしまった。



━━━━━━━━━━━━━━



今となっては若気の至り、俺にも中学二年の時に二週間だけ彼女というものがいた。


その彼女とできなかったこと

・映画を見る

・いつもより高いレストランに行く

・プレゼント交換

俺は、これらを全て特上コースで堪能したい。


だから俺は今日、皮肉ながらとてつもなく楽しみにしていたのに・・・。



もう待ち合わせの時間からは二十分は過ぎている。



どういうことだ?

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