lesson13 元の世界に帰りますか?

「……その女の子のように?」


 エミリーは怒りで震えました。


「ヨウコの事ですか……?」


 エミリーの脳裏に、これまでのヨウコとの旅の思い出が蘇ります。


「ヨウコの事ですかーーーーっ!!!???」


 エミリーの全身から凄まじいオーラが放たれ、ブロンドの髪が激しく逆立ちます。

 ヨウコを殺された怒りがエミリーを変身させたのです。

 その迫力に魔王は震えました。


「何という戦闘力でしょう。私はとても動揺しています」


 エミリーはヨウコのまぶたを優しく閉ざしました。


「ヨウコ、ありがとうございます。あなたのおかげで私はとても楽しかったです」


 そして魔王を睨みつけると、剣を捨てて殴りかかりました。


「これはヨウコの分です」

「痛いです」

 エミリーの拳が魔王の顔面にめり込みます。


「そしてこれもヨウコの分です」

「とても痛いです」

 エミリーの蹴りが魔王を吹き飛ばします。


「そしてこれは————ヨウコの分です」

「私は死んでしまいま————」

 そしてエミリーの掌から放たれた光が、魔王を跡形も無く消し飛ばしました。


 気がつくと、エミリーは泣いていました。


 すると、そんなエミリーの前に光が降り注ぎ、女神が現れました。


「魔王を倒してくれてありがとうございます」

「どういたしまして」

「あなたの願いをなんでも一つ叶えます。元の世界に帰りますか?」


 エミリーは頷こうとして、ハッとしました。

 そして首を横に振り、願い事を言いました。


 ☆☆☆


 数日後、エミリーとヨウコは別の大陸を目指して船に乗っていました。


「エミリー、帰らなくて良かったのですか?」


 エミリーは元の世界に帰らずに、女神に頼んでヨウコを甦らせたのです。


「とても大丈夫です。別の魔王を倒します」


 この世界には他にも魔王がいて、彼等を倒す毎に願い事を叶えてくれると女神は言いました。


「ところでエミリー、私はなぜメイド服を着ているのですか?」

「お願いをした時、ついでに着せて貰いました」

「なぜですか?」

「似合うからです」

「とても恥ずかしいです」

「とても大丈夫です」


 エミリーはヨウコのスカートを捲り、ヨウコはエミリーにビンタをしました。

 エミリーの異世界ホームステイは、まだまだ終わりそうにありません。






 あのエミリーが異世界にやってきたようです。


 第一部 〜完〜

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あのエミリーが異世界にやってきたようです。 てるま@五分で読書発売中 @teruma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ