望んだ日常は
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「お疲れさまです」
「おう!マコトくんお疲れー!」
職場の人達に挨拶して帰宅。
マオがいなくなってから1ヶ月。
俺は勇気を出してあの会社から退職した。
今は親戚のおじさんの工場で事務関係の仕事をやっている。
給料は少し下がったが、
「さて、描くかー!!」
自分の時間がその分増えた。
どちらの生き方が良いのか、それは自分が決めることだ。
ただ、俺は仕事終わりに夕陽を見ながら風景画を描ける時間が、楽しくて仕方ない。
「ん、こんなもんかな」
時間はあっという間だった。
帰ってご飯を食べ、風呂に入って明日の準備をする。
そして布団の準備をしかけたところで、
「……いや、ベッド使ってもいいんだったな」
自分以外、この部屋にいないことを思い出した。
誰もいない。前まで当たり前だったその現実がひどく寂しく思えた。
充実してるはずの毎日に、何かが足りないのは考えないように、ベッドで眠る。
目が覚めた。
「…………おはよう」
いつも通りの、独り言。この一ヶ月、返ってこなかったその返事は、
「元気がないぞマコト。はじまりの挨拶は、もっと元気に、おはよう!!だ!」
当然であるかのように返ってきた。
玄関から入ってきた、笑顔のマオがそこにいた。
「……………え?……なん、で………」
「合鍵、私が持ちっぱだっただろう」
「違う。消えたはずじゃ」
「天使の特典だと。マコト、元々君は前の会社のせいで鬱になって死ぬところだったそうだ。その運命を変えたのが私ってことだ。だからその特典として、ここで生きられるようにしてもらった」
天使のやつに結構無理言ったがな、といたずらっぽく笑う彼女は、まさしく僕の知ってるマオだった。
「ほら、元気な挨拶はーーって、おい!」
良かったと、マオを抱きしめた。
マオが少し照れていたが、言われた通り元気に答える。
「おはよう!!!マオ!!」
最高の1日と、最高の人生が、この挨拶から始まった。
自称魔王と社会人 波樹 純 @yosabito
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