え、わたしが魔王ですか?〜無能だからと追放された創造魔法士だけど、魔族のみんなと楽しく国を創っていたら最強の魔王に覚醒していた!

泥水すする

第1話 追放されました


 ビルマ・マルクレイド、15歳。一応、巷で話題のS級冒険者クラン【灰狼勇華団ブレイブウルフ】の魔法士をやっていました。


 そう、やっていました。過去形である。


◾️


 その日、わたしはいつもと変わりなくギルドへ向かい、朝から仲間たちが来るのを一人で待っていた。


 だがしかし、いくら待っても誰一人としてギルドへ訪れない。


 わたしは受付嬢のアシュリー嬢へと仲間の行方を知らないかを尋ねてみた。


 すると、


「ビルマ様は既に【灰狼勇華団ブレイブウルフ】を解雇されたようですので、彼らの動向をお伝えすることは出来かねます」


 耳を疑った。なにかの間違いだと思いたい。

 

 その時だった。


 カランコロンカラン──仲睦まじい様子でギルドに入ってきた彼らは、【灰狼勇華団ブレイブウルフ】の面々だった。


 ただ、今日はわたしの知らない顔ぶれが一人──本来わたしがいただろう立ち位置に、知らない黒髪の美少年がいた。


 いやいや、待って!


「ちょっと、どういうこと⁉︎」


 わたしは、先頭に立つ団長のガイルに詰め寄っていた。


「ずっと一人で待ってたのに……。そしたらアシュリー嬢がわたしは解雇されたとかワケ分かんないこと言ってくるし、一体全体どうなってるの。あと誰よ、その子」

「お前の代わりだよ、ビルマ。つまり、お前はクビだよ、クビ」

「じょ、冗談……だよね?」

「いいや、事実だ。魔法士としてなんの役に立たないお前みたいな異端を庇いながら戦うのは、もう難しいんだ」


 異端──言わんとしていることは分かる。

 というのも、魔法士としてのわたしは些か特殊だ。


 魔法から生み出されるものは【火】【水】【雷】【土】【光】【闇】の6属性の自然エネルギーのみと限られており、大体の魔法士がその6属性のうち適正にあった属性魔法を極めるとされている。というのが、子供でも知っている一般常識なのだが……わたしの場合は、違う。


 わたしは、魔素で属性魔法ではなく物質そのものを生み出すという、特異な能力に目覚めていた。物質と言っても様々だが、冒険に役立つ回復薬なども創造クリエイト可能である。ただその一方で、通常の属性を応用した魔法は一切扱えない。


 【創造魔法士クリエイトマジシャン】──それが、わたしに付けられた二つ名だ。


 確かに戦闘面では役に立たなかったかもしれないけど、回復や状態異常の治癒はわたしが薬を精製して担っていたし、ダンジョンに閉じ込められたときだって、わたしが食料を創造クリエイトしなければ、みんな餓死していたはずだ。それなのに、いきなりクビだなんて……。


「ひどい、ひどいよ……」

「なにがひどいって言うの?」


 ボロボロ涙を流すわたしへ、ずっと黙っていた聖騎士のクレアが言ってくる。


「確かに、駆け出しの頃は助かったわ。回復薬に解毒薬や強壮薬、食料がない時はご飯まで作り出してくれた。あなたがいなかったら、今のあたしたちはいないかもしれない」

「だ、だったら……」

「でもなによ、最近のあんたなにもしてないじゃない? 回復薬も魔石も店で買えるわ」

「…………」

「ビルマ、あんたが役に立ってたのは最初のうちだけよ。今はお金にも困ってないから、わざわざあんたに創造クリエイトしてもらう必要もないし、正直邪魔なのよね? お分かりかしら?」

「クレアの言う通りじゃん」


 追撃とばかりに、槍使いのギルも言ってくる。


「役に立たないビルマに報酬を分配してやってただけ俺たち譲渡した方じゃね?」


 それにさーと、ギルはマドルフの肩を叩きながら、


「マドルフはお前の数百倍有能だし、滅多に使える者がいない光魔法を扱えるくらい超期待の新人なんだわ。それに見ろよこの面、男としてマジ嫉妬しか覚えねーわ」

「ギルさん。僕なんて、まだまだ若輩者です。その言い方は……」

「もう、マドルフったら! そんなに謙遜しなくていいじゃない!」


 と、クレアがマドルフの腕に抱きついた。


「マドルフ、あなたはこれからS級冒険者クランの一員になるんだから、もう少し堂々としなきゃダメよ? でもまあ、そういうところもいじらしくて可愛いけどね? ふふふ」

「クレアさん、こんな公の場であんまりベタベタしないで下さい」

「それじゃあ……今晩、部屋で二人っきりでだったら、いいのよね?」


 そう言ってクレア、マドルフの頬にキスをした──その瞬間、「ヒューヒュー! お熱いね、お二人さん!」と野次馬の歓声が鳴り響いた。気づかなかったが、ギルドへと帰ってきた冒険者がわたしたちをぐるりと取り囲んでいた。


 クレアが、マドルフの肩に頭を乗せて──グニャリと顔を歪ませ嗤った。


「あれれ~、まだいたんだお邪魔虫さん? あたしたち、これからマドルフの歓迎パーティーがあるから忙しいんですけどぉ? それに今夜は……眠れない夜になりそうだしね、マドルフ?」


 マドルフは「もう、クレアさんはそうやって……」と、ぽっと頬を赤らめた。もしかしたら、既に二人はそういう関係なのかもしれない。


 続けて、野次馬冒険者たちも嘲笑を浮かべて、ヒソヒソ話を始め出していた。


「乞食が、帰れよ」「自分はなにもやってないくせに」「まさか、体で仲間に媚びでも売ってたんじゃないの?」「おーいビルマちゃん。俺にもご奉仕してくれよ」


 そんな罵詈雑言。S級冒険者クランにいながら魔法士と呼ぶには怪しいわたしのことを妬む冒険者たちは沢山いたから、ここぞとばかりに責め立ててくる。


「ビルマ様」


 アシュリー嬢が、にっこりと笑う。


「お疲れ様でした。一応、失業扱いになりますので保険がおりますが、どうされますか?」


 ギルド内にどっと笑いが起こる。


 今この瞬間、このギルドにいる全員がわたしの敵だった──


(こんなの、あんまりだ……)


 わたしは、逃げるようにギルドを飛び出した。





────────


数年ぶりにファンタジーを描きました(´・ω・`)


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