第19話 外の世界2

多くの大人が歩いているようすを眺める4人。


「人が多い」

「そうだね」

4人はこんなに多くの人がいるのを見るのは初めてだ。


「こっちだよ」

アグナスさんが出口の方を示す。

「外に出るよ」


歩き出す4人。

「あれ?」

「なんか変な感じ」

「なんだろう」

出口に向かって歩きながら4人は顔を見合わせる。よくわからないが、何かこれまでと歩いているときの感覚が違う。

アグナスさんについて外に出ると太陽の光がまぶしい。


「わあ」

「すごい」

「ひろい」

「大きい」

目の前に広がる光景に驚く4人。

自分たちが住んでいたところと同じ円筒形だが、サイズがずっと大きい。


「何倍の大きさだろう」

「建物が多いね」

「自動車もいっぱい走ってる」

「自転車に乗っている人も多い」

「ほんとだ。ここの大人はみんな自転車に乗れてる」

「アグナスさんみたいにすぐにこける人がいない」

それを聞いたアグナスさんが笑顔でいう。

「ぼくもここならこけたりせずに自転車に乗れるんだよ」


「みんなおいで」

エレナの父が呼びかける。


「ここではこっち側が丸壁なんだよ」

4人は振り返って見上げる。

「高さはどのくらいだろう」

エルネクがつぶやく。

「2倍以上はありそう」

丸壁を下から反対側の地面まで見上げながらラグレンがいう。

「3倍くらいかな」

見上げていたエレナが予想する。


「3倍よりちょっと大きい。ここは直径400メートルの円筒形なんだよ」

アグナスさんが説明する。


「あれ、もしかしてあの並んでる丸い線って」

エルネクが丸壁に描かれている丸い模様に気づく。

「わたしたちがいたところの大きさと同じかも」

エレナも教えてもらったここの直径と、並んでいる円形の数から思いつく。

「直径120メートルだったから、三つ並んでるということは360メートル」


丸壁には丸の模様が全部で7つある。真ん中に一つと、その真ん中の丸を取り囲んで6つの丸がちょっと隙間をあけて並んでいる。

「ちょっと隙間をあけて並んでるから、隙間を足すと400メートルになるんだ」

アグナスさんの方を見ながらエルネクがいう。


「そうだね。あの7つある丸の内、右側にあるC4と書いてあるところが君たちが住んでるところだよ」

アグナスさんが指さす。

「へー」

子供たちは見上げながら感心する。

「他にも6つ街があるんだ」


「じゃあ、そろそろ行こうか」

エレナの父がそういうと、道路に止まっている自動車を指さしている。子供たちが見たことのない大きな自動車だ。

「さあ、乗って」

4人とアグナスさん、エレナの両親の7人が乗り込む。座席は10人分、自動車の左右に椅子が前を向いて3列並んでいて、一番後ろに4人分の椅子がある。子供たちは窓際の座席に座り、アグナスさんとエレナの両親は一番後ろの座席に着く。全員席に着くと自動車が動き始める。


「どこに行くんですか?」

「すぐにつくから」

「着いたら説明するよ」


窓から外を眺める4人。

「ここには大人がいっぱいいるみたい」

「どのくらいいるんだろう」

「なんかここの建物って縦に長いのが多い」

「ほんとだ」

「天井が高いのかな」

4人が住んでいるところと異なる形の建物が多いのを見て驚いている。


「あれは上にも部屋があって、階段とかエレベーターで昇り降りするんだよ」

アグナスさんが説明する。

「部屋を上に積み重ねるような感じかな。一つ上に乗せたのが二階建で、二つ積み重ねたのを三階建てというんだよ」

エレナの父が説明する。

「へー」

「ぼくらの家は一階建てということか」

エルネクが自分たちの街の家を思い浮かべる。


「そろそろ到着だよ」

自動車は道路を左折してちょっと狭い並木道に入る。正面に建物が見える。道路は、建物の手前でぐるっと円を描いていて、Uターンして並木道に戻れるようなっている。自動車は建物の正面に横づけして停止する。ドアが開く。建物の前に大人が1人立っている。


「さあ、みんな降りて」

エレナの母が4人に外に出るよう手で外をしめす。4人は先に降り、エレナの両親、アグナスさんが自動車を降りる。全員降りると自動車のドアが閉まり通ってきた道を引き返していく。


「こんにちは」

4人は出迎えの大人にあいさつする。


「こんにちは。初めまして。エレナ、エルネク、カルラ、ラグレン」

初めて会う大人だが、彼らは4人の名前を知っているようだ。


「遅くなってごめん」

建物の中からもう一人の大人が出てくる。

「あれ、タルカさんだ」

タルカさんが子供たちに手を振る。

「ようこそ。みんな」

「こんにちは」

「こんにちは。待ってたよ」

タルカさんが道路の方に目を向ける。何かあるのかと4人が振り返ると、自動車が1台こっちに向かってくるところだ。


さっきと同じところに自動車が停車しドアが開く。

大人が3人おりてくる。大人の一人は見覚えがある。

「ルラサさんだ」

カルラがいう。

「やあみんな」

ルラサさんが子供たちにあいさつする。

子供たちがあいさつを返そうとしたところ、自動車から4人の子供が降りてくる。

他の子供を見るのは初めてだ。自動車から降りた4人の子供たちも驚いているようだ。


「こんにちは。タウラク、アルマ、ラスタス、ルネア」

最初にここで待っていた大人が4人の子供たちにあいさつする。彼らの名前なのだろう。


「こんにちは」

子供たちもあいさつする。

エルネクたちは初めて見るほかの子供から目が離せない。彼らも同じようで、あいさつした後すぐにエルネク達の方を見る。


タルカさんが子供たちに向かっていう。

「みなさん。ようこそ、学校へ」

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地球の缶詰 草川斜辺 @shahen

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