2話
私は分厚い扉を開けた。
「こんにちは!」
「こんにちは」
そこには、黒髪の少女が立っていた。中学生か、もう少し下か。
冬の格好だが、とても極夜の南極を歩いてきたとは思えない。
それに、ここは昭和基地から数百キロ離れた場所にある別荘だ。ご近所さんと言えば、東に35キロ進んだ先にあるノルウェーの観測所だ。
では、少女がなぜ、ここに?
答えは分からない。正直、どうでもいい。
これが夢だろうが、現実だろうが、例え、私が精神を病んでいようと、いずれにせよ医者はいない。モニター越しに往診は可能だが、精神異常の烙印を押されて終わりだ。
なので、私は快く少女を迎え入れる。
「どうぞ」
「ありがとう! 今日は面白いものを見つけてきたよ!」
「今日は? 君と会うのは初めてだと思うけど」
「初めてじゃないよ。これから会うから」
「これから? 君は未来から来たの?」
「そう。そこで、おじさんと会うの」
「でも、僕にとっては初めてだ」
「私にとっては初めてじゃないよ」
少女は微笑んだ。
南極とは、実に不思議な場所だ。
南極小説家~日々執筆、ときどきSF~ 高井カエル @spex69u1
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