最終話。勇者パーティ。大罪人として国を追われる

「おっおお、俺の聖剣、聖剣が……!」


 命からがらダンジョンから脱出したカインらは、ようやく街にたどりついた。

 カインは壊れたように同じセリフを繰り返している。


 勇者のシンボルであり、見せれば誰もがひれ伏した聖剣がぶっ壊れたのだ。

 目の前が真っ暗になっていた。


「ちょっと、あんた。いい加減、うるさいわよ!」


「お腹空いたですぅ!」


 ボロボロの聖女ルディアと、拳王ミアも不平不満を吐き散らす。


「荷物も全部、無くしちゃうし、最悪だわ……!」


 カインらは地図とコンパスを失ったために、森で道に迷い、帰ってくるのに2日もかかってしまった。


「そ、それに、おかしいぞ? ダンジョンから出てしばらく経つのに、俺のレベルが1ってのは、どういうこった?」


「私もよ! ねえ、これ何かヤバい呪いでも受けたんじゃないの?」


「だったら、聖女のてめぇが原因もわからねぇってのは、おかしいだろ!?」


 何かデバフ系のスキルか魔法を喰らったのだとしても、効果が1日以上続くなど有り得ないことだった。


 聖剣を失い、レベルも1。もはや、落ちるところまで落ちたと言って良い。


「ま、まさかロイの言っていたことはホントなんじゃ……?」


「あん? 守護天使なんざ、伝説の存在だろ? あんな無職に付き従っている訳がねぇ!」


 守護天使、それは神の力の一部を担うルールブレイカーだ。


「もう、どうでも良いから、早くご飯にするですぅ!」


「おい、あんたら、もしかして勇者カイン様、御一行かい?」


 何やら殺気だった様子の兵士たちが、カインらを取り囲んで来た。


「あっ? だったらなんだってんだよ?」


「ミアたちは、偉い勇者パーティですよ。ご飯をおごれですぅ!」


 カインとミアが脅しつけるが、兵士たちは怯まない。

 それどころか、職人や商人、冒険者や主婦らも何やら怒気をにじませて、カインたちを包囲してきた。


「聞いたよ。あんたら、黒竜王を復活させちまったんだってな……」 


「ロイ様って英雄が、たまたま居合わせて黒竜王を倒しくれなかったら……ティファ姫様が殺され、この国はヤツの好き放題に蹂躪されていたって話だぞ!」


「今はまで何してやがった!? 国王様は大変なお怒りだぞ!」


 人々が口々にカインらを責め立てる。


「な、なんだ! てめぇら!? 俺様は勇者だぞ! この国の魔物を討伐してやってたんだぞ!」


 カインにとって、このような態度を他人に取られるのは、初めてだった。


「恩着せがましいんだよ! 大罪人が!」


「世間知らずの若者を荷物ちに雇って、薄給でこき使っていたそうじゃないか!?」


「お前らみたいに新人を使い潰すヤツがいると、冒険者ギルドの信用に関わるんだよ!」


「勇者ってだけで、さんざん偉そうにしやがって! 溜まった店のツケを払いやがれ!」

 

 そのうち、腐った卵を投げつける者も現れた。


「ひゃあ!? 卵はぶつける物じゃなくて食べる物ですよ!」


「出てけ! 疫病神! この国から出ていけ!」


 さらに石などが投げつけられる。


「て、てめぇら。俺たちにこんなマネして、ただですむと思ってやがるのか!?」

 

「きゃあ!? ちょっとやめなさいよ! それより黒竜王を倒したヤツがいるってホントなの!?」

 

 あんな化け物を勇者パーティ以外の者が倒せるとは思えない。


「無職のロイ様だ! お前らに使い捨てにされたって聞いたぞ!」


「はぁ!? あいつが!?」


 カインが素っ頓狂な声をあげる。


「バカな。あいつは荷物持ちもまともにできねぇ、能無しのホラ吹き野郎だ!」


「そうよ! そうよ!」


「ひぃい! カインさん、逃げましょうよ!」


「ふざけんなミア! こいつらボコしてやる!」


 カインは近くにいた兵士を殴りつける。しかし、しょせんはレベル1の攻撃。たいして効いておらず、カインは逆に殴り返された。


「ぶべぇ!?」


 カインが鼻血を吹いて仰け反ると、大勢の兵士たちが、彼をボコボコにした。


「ひゃ!? ……ご、ごめんなさい! もうここには来ないから!」


 それを見たルディアが、手を合わせて謝る。

 3人は泣きべそをかきながら、逃げ出した。



 ロイはその後、救国の英雄としてティファ王女に婚約を迫られることになる。

 一方で、勇者カインは、黒竜王を復活させた罪人として国を追われ、さらに落ちぶれていくが、それはまた別の話。

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全自動守護天使《デバフ・マスター》。勇者に追放されたが、幸せなセカンドライフを謳歌する~「クソ雑魚しかいねぇ~www」て人生なめくさってたけど、それって俺が敵をレベル1にしていたおかげだよね?~ こはるんるん @yosihamu

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