全自動守護天使《デバフ・マスター》。勇者に追放されたが、幸せなセカンドライフを謳歌する~「クソ雑魚しかいねぇ~www」て人生なめくさってたけど、それって俺が敵をレベル1にしていたおかげだよね?~
4話。国王から姫を嫁にもらって欲しいと頼まれる。
4話。国王から姫を嫁にもらって欲しいと頼まれる。
「お主が黒竜王を倒してくれたロイ殿か。この通り、いくら感謝してもしきれぬ。ありがとう」
謁見の間に通されると、国王が俺に向かって感謝を述べた。口髭を生やした恰幅の良い男だ。
「できれば爵位と領地を授けたいと思うが受け取ってはくれぬか?」
『こ、これは破格の待遇だよ!』
アルク姉さんが目を白黒させている。
そういうものなのか?
「……悪いが俺は、姉さんと一緒に、のんびり自由に過ごしたいと思っているんだ。だから、そういうモノはいらない」
『いらないの!?』
貴族は、お付きの者をたくさん従えている。とてもじゃないが、自由とは言えない身分だ。
「そうか。では金はどうかな? 金貨1万枚をお渡ししよう」
『金貨1万枚!』
俺の月給が銀貨1枚だった。金貨は銀貨の100倍の価値がある。
もはや俺には理解が追いつかない大金だ。
「……それもいらない。大荷物を抱えて歩く生活は、もうコリゴリだ」
何しろポーション一個、紛失したり、壊しただけで怒鳴られてきたからな。
大事な物を抱えながら歩くのは胃に悪い。
「ふむ……なんとも無欲な若者よ」
王様は感じ入ったようにうめいた。
「それでは我が娘、ティファを嫁にもらってはいただけぬか? 我が国は小国。力ある英雄を王家に迎え入れなくては、やってはいけぬのだ」
「お、お父様……! 何をおっしゃるのですか!?」
ティファが顔を真っ赤にして叫ぶ。
「本当は勇者殿を婿に迎えて、他国への抑止力にと考えておったのだが……黒竜王を従え魔物どもの王となったそなたの方が、よほど相応しい」
「……ありがたい申し出だが。ティファの気持ちを蔑ろにして決めるのは駄目だと思うぞ」
初対面の男といきなり結婚しろと言われては、ティファも災難だろう。
「い、いえ、そういう訳では……も、もしよろしければ。ロイ様、この地にしばらく逗留なさっていただけないでしょうか?」
「それは、ぜひ願いたいものだ」
「……逗留? いや、しかし。俺は毎日、昼寝したり、釣りをしたり、狩りをしたりして、のんびり過ごすつもりだぞ?」
「構わぬよ。もし気が向いたら、娘を鍛えてやって欲しい。魔法剣士として優れた才能を持っておるが、最近、伸び悩んでおってな…… 英雄殿の弟子としていただければ、望外の喜びだ」
「私からもお願いいたします。ロイ様の弟子として、まずは、身の回りのお世話など、させていただけないでしょうか?」
『はぁ!? 王女様が弟子って……!』
「そんなことを言われてもな。俺は無職で、何のスキルも魔法も使えない。教えられることなんか、何もないぞ?」
「ロイ殿。ご謙遜されるな。わしは最強の【職業(クラス)】とは、勇者ではなく、無職だと思っておる。鍛えれば、神に匹敵するまで強くなる無限の可能性を秘めた存在。
それが無職だ」
王様が厳かに告げ、ティファが深く頷いた。
「黒竜王を一撃で倒されたその剛腕。さぞかし辛い修行に耐え抜いて身につけられた力かと思います。
私もロイ様のように、自分の可能性を信じて、自分を磨きたいのです。どうか、未熟なこの私を導いてはいただけませんか?」
『ここまで言われたのなら、弟子にしてあげたら?』
健気なティファの態度にほだされたのか、姉さんが、そんなことを言ってくる。
「そうか……正直、ティルに勝てたのは姉さんのおかげであって、俺がすごい訳ではないのだが」
「その先程から、ときどきおっしゃっている姉さんとは……?」
ティファが不思議そうな顔をして尋ねてくる。
「俺には、敵対する者のレベルを強制的に1する力を持った守護天使が。アルク姉さんが付いているんだ」
『ボクのことだよ!』
姉さんが手を振るが、無論、王様とティファは気づかない。
ふたりは俺の言葉に呆気に取られていた。
「まさか神の御使い。絶対なる力の化身である守護天使を従えておられるのか!?」
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