1章3節 服選び

 今日は、初めてリンとショッピングモールに行く。そして、俺にとっては初めての女子の買い物でもある。リンと、俺の世界でどっか行くということも、今回で初めて。

 

 「イチカイチカ! 見て! 空に何か飛んでるよ!」

 

 この世界の物を見るたびに、リンが興奮して俺に話しかけてくる。


「そうだな、あれは飛行機って言うんだ」

「やっぱり、この世界の物はいろいろ面白くて、とても楽しい気分になるよ!」

 そんなことを言っている間に、俺たちはショッピングモールに着いた。

「ここが、しょっぴんぐもーる? なんだかなんだかとてもでかいね!」

「そうだなぁ、俺が小っちゃかったころよりも、だいぶでかくなってるなぁ」

 俺は、何年かぶりに来る目の前のショッピングモールを見て、少し驚いてしまった。

 懐かしい。まだ家族のみんなと一緒に訪れていた頃を思い出す。姉さんや弟と一緒にゲーセンで遊んでたっけ。そんなことを思いながら、リンと一緒にショッピングモールの中に入る。

 中にはたくさんの人がいた。学校の友達同士のところやカップル、家族が多かった。


 「イチカ、なんか人多くない?」

もし、俺がリンと一緒にいなかったら、たぶん今頃帰宅していただろう。

「リン、できるだけ手短に済まそうと思ってるんだけど、それでもいいか?」

リンにそう聞くと、リンは何も言わず、首を傾げた。俺たちはそのまま、ショッピングモールの中の服屋を探した。

「リン、君の世界では、どうやって服とか買ってたんだ?」

「そうだなぁ...」

リンは少し思い出して、

「私の世界では、近所に何でも売っていた店があって、そこで、適当にワンピースとかを買ってたなぁ」

「そうか、じゃあ、そのほかの物見てみるか?」

そうリンに言うと、

「ホントに? だったら、あの服とか来てみたいかも!」

リンが指さしたのは、黒一色の、無地のパーカーであった。

「そんなものでいいのか?」

俺は、リンが地味なものを選んだので、リンに問うと、

「別に、服選びに興味なんてないんだよね、普通に着れればいいんだ。それに、」

リンは少し目を細くして、

「破壊者に気づかれたら、だめだからね」

と、少し暗い表情でつぶやいた。


 その後俺たちは、そのまま家に帰った。気がつけば、もう夕方である。家についたあと、夕ご飯の支度をした。

「今夜のご飯は何がいい?」

リンにそう聞くと、

「何でもいいよ、君が作るご飯はとても美味しいから」

そう、笑顔で言ってくれた。自分の作るご飯が美味しいなんて言われたのが初めてで、とても嬉しくなった。それがあってか、今日の夕ご飯は麻婆豆腐にした。


「イチカ、これすっごくうまいよ!」

「ありがとうリン。これはマーボーっていうんだよ。」

「私これ好き! まだある?」

 リンがおかわりを要求してきたので、リンの皿に盛ってあげた。

「これはもうないから、また作っておくよ」

「イチカ、その約束は絶対に守ってよね!」

 リンは笑顔で、皿の麻婆豆腐を頬張った。


 麻婆豆腐をリンと食べたあと、リンに破壊者について、気になっていたことを聞いた。

「なぁ、リン。破壊者の他に、この世界に来たやつとか、わからないか?」

リンは少し考えると、静かに言った。

「わかるんだけど、そいつの名前が、ちょっとわからないんだ」

「なるほど...」

リンや破壊者の他に、あの世界の関係者がいることがわかった俺は、

「なら、そいつらの事も、今から調べていこう」

そうリンに提案した。

「そうだね、破壊者についての情報と同時に、そいつらのことも調べれば、破壊者のことについて、正確にわかるかもしれない」

こうして、俺達の調べる標的の数が増えた。

 

 俺たちは、零時になったとき、それぞれの部屋に行って。夜を過ごした。そして朝、俺は学校に行く支度をしていた。

「イチカのその姿、もしかしてどっか行くのかい?」

 俺の制服姿を見たリンが、不思議な目で俺を見ていた。

「今から学校に行く。リンも、俺についてくんだろ。」

「そうだけど、その、学校はどれくらいの距離があるの?」

「歩いて1時間だけど、電車で行くから、それよりも早く着く」

 そう、俺がリンに言うと、リンが困った顔で言ってきた。


「イチカ、デンシャって、なに?」


「電車っていうのは...まあ自分の目で見たほうが早いと思う」

そうリンに言って、俺たちは支度を終えて、学校に向かってでかけていった。

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次元と絆 宮原慶太 @drumnight

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