本作は、段落分けがされていません。読者を意識した工夫は少ない方でしょう。Web小説向きじゃないかもしれません。読んでいて嫌になることもあるでしょう。けれどどこか、詩的です。「私にはね、あの月が二つに見えるの」そんな短い言葉の真相を追い求めていくうちに迷い込むのは、恋愛的ミステリーかもしれない。交わされる言葉のひとつひとつが痛みを伴っています。だからでしょうか、鮮やかです。
お互いを思う気持ちが痛い悲恋。何気ない会話から良い人たちの気持ちがこぼれてきます。惜しむらくは、読んでいて目が滑ること。段落わけがされていれば、と惜しむ気持ちが溢れてきます。