こちらはとある大学の准教授の男性が主人公です。
ひょんなことから彼の「准教授」という立場が危うくなり、その立場を守り抜くため、彼の人生をかけた論文作りを始めることになります。
彼は「悪魔」を題材にした小説に出会い、人間の悪を研究していくことに決めます。そこからとある実験を始めます。
学生たちを高額時給で雇い、人狼ゲームのような犯人捜しを行う実験です。
この心理戦がストーリーの要になっており、とても興味深い内容となっています。
そして、何よりそこへ向けた主人公の想いにぜひ注目していただきたいです。
彼はいつの間にかどんどんと闇へ落ちていきます。
本人さえ気が付かない部分で様々な事柄が起きていきます。
なのにやはり気付かない。
人間何かに追い詰められたり、大切な立場が危うくなったりすると、誰しもこの主人公のようになるのではと、教訓のような物語でもありました。ラストは不意打ちを食らったかのように泣いていました。
彼の最後はどうなってしまうのか。
悪魔とは一体何なのか。
この真実をぜひ読んで知っていただきたいです。
「乱歩のまなざし」に続く二作目なので、時系列・登場人物的にはこちらを後に読むのがおすすめです。ただ人物相関は複雑ではないので、先に読んでも問題はなさそう。
「乱歩のまなざし」は文学物に見えて心理学重視のように感じたのですが、今作は心理学に見えて文学的です。
心理学の実験風景を、「僕」と共に体感する感じなのですが、どんどん闇が深まって、狂喜乱舞する悪魔が見える、ゾッとする光景が文章により表現されており、とんでもないです。
「乱歩のまなざし」の方は、”乱歩っぽい”、どことなく気味が悪いような?という感じの雰囲気が漂っていましたが、こちらは”正史っぽい”、人間が一番怖い、という雰囲気が漂っており。
横溝正史の”悪魔が来りて笛を吹く”から「僕」は実験内容の着想を得るという話ですが、そちらの作品を読んでなくてもわかる内容です。
悪魔を作る事は出来るか?という実験に、興味本位に付き合っている気分で読んでいたので、最後の数話は悶絶しました。
名木橋、ありがとう!もうこの感想しかない。
最悪になりかけた読後感から私を救ってくれてありがとう・・・!
ほんと救世主だわ。
!?って、もしかして係ってる!?って思わせるところまで、すごい。