第5話工作を行い、気勢を削ぐべし。
老人は香が焚かれた
常人や矮小な男一人の手で消せるはずがないと踏んでいた。
虚太郎と対峙していた、島原城にかけていた術が、溜め込んでいた怨念無念諸共に、根元からごっそりと消えたのを感じた為である。
「あの男。……何処のものか知らんが、やるでは無いか。計画を早めねばならんか」
そう
「
「あい、分かった。今行く」
怒りを奥底に仕舞い込み、笑顔を貼り付けながら庵から出ると、ジェロニモの元へと杖をつきながら向かう。
「ジェロニモよ、救いは順調かの?」
宗意軒は座り、
「はっ。でうすの御名を讃える
ジェロニモと呼ばれた男は片膝をつき、
「ならばよい。
そう言いながら、
空となった椀を置いた瞬間。――破裂音が
「何事じゃ!」
森宗意軒は老体に似合わない速さで立ち上がり、大声を出す。
すぐさまに男が一人、森宗意軒達のいる部屋へと駆け込んでくる。
「大変です! ……おおぬさの畑が燃えております!」
息も絶え絶えになりながらも、報告する男。
「ジェロニモよ! 一刻も早く、火を消しに行くのじゃ! アレは我等の生命線ぞ!」
血相を変える森宗意軒。
しかし、ジェロニモは、それよりも速くに行動を開始していた。手早く
しかし、それに容赦をするほど甘くはない虚太郎。
畑に点々と置いた火薬が爆ぜ、さらに火の勢いを増させる。
「風魔忍法。
ちろりと口の先から赤々とした火が漏れる。
「燃えろ」
大麻の畑が燃えゆく。火薬が爆ぜる。
「こんなところか。……魂変は疲れるから困る」
そう言ちた時には
剥ぎ取っていた頭巾を戻そうと、手を掛けた。
「イエェーぁぁ!」
耳を
火の壁を避け迂回するわけでも無く。
ただ真っ直ぐに火の海を渡り、駆ける、着物は焦げ、顔は煤だらけになった男。
虚太郎は
「貴様! 釘を刺したのに何故、我等の救いの邪魔をする!
ジェロニモは、怒りのあまり端正な顔を崩し、噛みつかんばかりに虚太郎へと顔を近づける。
「これも仕事よ。……悪く思うなっと!」
虚太郎はジェロニモの鼻っ柱に向かって頭突きを放つ。
その頭突きは読み筋であった。ジェロニモも頭突きを放ち、額と額がかち合う。
すぐさまにどちらも距離を取り離れる。
「ふう。……ここらが潮時だな」
額から流れる血を指で
「では、
そう言った矢先に、
周囲に立ち込める、前が見えない程の白い煙。
ジェロニモは、玉を取り出した瞬間に駆け肉薄し、白い煙を断ち斬るように大太刀を
しかし、
「逃げるな! 正々堂々と戦え! 我が名はジェロニモ
その叫びに答えることもなく、虚太郎は声を殺しながら笑い、島を後にする。
風魔が吹く 豚ドン @coolesthiro
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