第2話 彼女の視点

 私の名前は、桜木凛子さくらぎりんこ24歳、小説家である。


 今では、書いた小説家大ヒットし売れっ子作家であり更には天才とまで呼ばれている。

 ちなみにペンネームは、志々雄でやっている。

 何故その名前かと言うと、ただの思い付きである。

 対した理由はない。

 そして今は、スランプで全く何も書けないただの使えない小説家である。

 私はデビューした際に作成した小説以外に、書いていた小説を全て編集に見せたら全て預かると言われたので全て預けている。

 その結果、編集の方が良い様に使ってくれ世に出してくれ今の生活が送れているが、デビューして以来全く小説を書けていない。

 書けていないと言うより、何となく書く気がしないのだ。


「はぁ~……私、これからどうなるのかな……」


 今は毎日大きな豪邸のリビングで、PCを広げネットサーフィンや動画を見て1日を過ごしている。

 何もする事無く、何も得る事もなくただ1日が終わって行く日々を過ごしている。

 そんな日々を過ごす中で、私はある事を始めた。

 それはネットのアプリで誰かと適当に話すことが出来る物で、私は素性を隠し20歳と年も若く小説家志望と言う思い付きのユーザ名でそれを始めた。

 始めた当初は、何かと話は続くも結局途中で続かなくなり、それをただ繰り返し続けてもう辞めようかと思っていた時に、ある人と出会った。

 その人は、玄人小説家と言う名前で小説家らしいが、話すたびに全く小説家感を感じずにたぶん、この人も私と同じように素性を隠しているんだろうなと思った。


「う~~ん、何かこの人は思った事を言うタイプぽいな。私の愚痴にも何故か付き合ってくれるし、何か何となくだけど続きそうかも?」


 私はふと直感的にだが、そう思い玄人小説家さんとのチャットが始まったのだ。

 それからは、日々私の家に世話係としてやって来るアルバイトさんの愚痴を家庭教師として、玄人小説家さんに送り続けた。

 彼からもそれを見て思った事をただ返してくれるので、何故かと会話が続きいつしか日課になりつつあった。

 そんなある日、また世話係のアルバイトの人が辞め、新しい人がやって来ると編集者から聞いた。


「志々雄先生、これが新しく採用とする人なのですがどうでしょう?」


 私は簡単な履歴書を受け取り、ざっと目を通しある所に目が止まった。


「小説家志望?」

「あ~そこですか? そうなんですよ、彼小説家志望らしいんです。備考欄に書くくらいなので本気なんでしょうね。にしても、志々雄先生が気にするとは珍しいですね?」

「えっ?」


 私自身も少し驚いた。

 今まで同じ様に何人もの履歴書を見て来たが、このような事は一度なかった。

 何故彼の履歴書に目が止まったかと言うと、ただ小説家志望と言う所が気になった程度であるとしか言いようがなかった。

 その後軽く編集者と会話した後、編集者は「それでは明日連れてきますね」と言って帰って行った。

 そして次の日、彼がやって来た。


 第一印象としては、礼儀正しい人には見えたが、何か言いたい事を口に出してしまう様な癖がある様に見えた。

 だけども、所詮彼も今までと同じアルバイトで私の本業を知り、素人なりにアドバイスをかましてきたり、自分が作った物語を私に読ませてきたり自己満足してくるような奴であると思っていた。

 それから二週間、彼とは最低限の会話だけし続けたある日、彼が私のスランプを知っていると明かしてきた。

 あ~今回はそっちか……どうせ、同情か心配する様な言葉をいうだけだろ。

 と思っていたら、彼は予想もしない言葉を私に浴びせて来た。


 それはもう、普通に聞けば相手を傷つける言葉であったが、何故か私はその言葉が私が勝手に作っていた壁を壊してくれたと思ってしまった。

 私は勝手に出来ないと決めつけていて、辞めてしまうとかと思っていたがそれを決めきれずにいた。

 そんな時に、彼からの本心と思える言葉を聞き決心がつくも、少しどこかで何でこんな小説家志望野郎の言葉がきっかけでいいのか? 何か少し悔しいな……あ~何か考えるだけで、段々と悔しくなって来た!

 その後彼は私に凄い事を言ってしまったと思い、そのまま家を飛び出て行き二度と来ることはなかった。

 編集者さんからも、彼は事情が出来て辞めてしまったと聞き、まだ後釜は決まっていないと知らされた。

 それから私は、彼の言葉を思い出し改めて小説を書いて、辞める前にもう一度大ヒットする様な物を創りだし、それから彼をあっと言わせて辞めてやろうと決めて動き始めた。

 そう決めてから数日過ぎたある日、息抜きにチャットアプリを開き玄人小説家さんを見ると、かなり悩んだ様な物が送られて来た。


「何か珍しいな、この人がこんな事を言って来るのは。内容的にかなりの失敗をした感じだな……さて、どうしようかな」


 私はそれを読み、最近似たような事があったなと思い出した。

 それこそ、私に言いたい事を言って来た彼である。


「そうだ。それを少しアレンジして、彼を元気づけよう。いつも私の愚痴とか聞いてもらってたし、たまには私から彼を手助けしてあげるか」


 そうして、私は玄人小説家さんに向けて自分の意見も混ぜて送信し、再び小説作成に戻った。

 それから更に数日後、編集者さんから電話を受けると内容が、以前辞めたアルバイトがまたやりたいと言って来ているがどうするかと言うものだった。


「その人の名前は誰?」


 私がそう聞くと、その名前は私に言いたい事を言った彼であった。

 それを聞きすぐに私はその人を採用する様に伝えた。


「まさか帰って来るとはね。もう会えないと思っていたけど、これで貴方に私が大成功した所を身近に見せられるわ。見ていなさい、華々しく大ヒットさせて、すがすがしく辞めてやるわ」


 そしてその日のうちに彼が家にやって来て、以前の発言を謝って来た。

 私としてはもう気にしてないし、逆に燃えさえてくれた事に感謝している。

 そのまま彼は仕事に取りかかりに行ったが、私は彼の事を少し知りたくなり、直接話し掛けに行こうと自分から久しぶりに行動をとった。

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売れっ子小説家の世話係をする小説家志望者 属-金閣 @syunnkasyuutou

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