エピローグ:新たな任務

 第一王女リステルは、王位継承権を放棄。

 よって、第三王女ラスピルが次期女王に内定した。

 第三王女ラスピルは、『三姉妹で国を支えていきたい』と明言。第二王女ラミエルを宰相に、第一王女リステルを将軍とした。

 閃光騎士団は、第一王女リステルの指揮下に入った。

 アサシン教団と連携し、ジェノバ王国を拠点にして活動を広めていく。もちろん、悪いことばかりでなく、いいこともするようだ。

 これには、指導者である【王冠】と、アサシン教団の『創造主』の間に、何かあったとクリードは考えていた。

 その答えは、ペシュメルガ男爵家に現れた『創造主』マリアテレサによって語られる。

 いきなり現れたマリアテレサと、クリードは対面で話をしていた。


「アサシン教団は、もともと閃光騎士団の暗殺部隊だったのさ」

「…………え?」

「大昔、騎士団から離反した暗殺部隊は『アサシン教団』を立ち上げた。これが始まりさ」

「……知らなかった」

「ふふ。それと、もう一つ……クリード、息子のお前に教えてやる」


 マリアテレサは、どこか悪戯っぽい笑みをうかべる。

 

「私は、元閃光騎士団の【王国マルクト】だ。そして……騎士団指導者の【王冠】デミウルゴスは、私の元夫だ」

「えっ」

「この和解案は、私とデミウルゴスの間で密かに進めていた。だが、当然教団も騎士団もそれを認めるのは難しい……だからこそ、不穏分子を一掃するためにお前をジェノバ王国に送ったんだ」

「まさか……十傑」

「そう。閃光騎士団【十傑】は、アサシン教団と閃光騎士団にとって最悪の不穏分子だ。騎士団の思想に染まり切った十傑を放っておけば、和解しても互いの組織にとって益はないからね」

「…………なるほどな」

「それと……もう気付いてるだろう? デミウルゴスは、お前の父親だ」

「え」


 これには、クリードも面食らった。


「待て。息子っていうのは、比喩的な……俺は、組織に拾われた孤児じゃ」

「馬鹿を言うな。お前は、私が腹を痛めて産んだ子だよ。実の息子っていうと、組織内じゃ目を付けられるからね。この任務が終わったら食事をしようって言っただろう? デミウルゴスも含めて、三人でね」

「…………」


 クリードは頭を抱えそうになった。

 そして、ついついマリアテレサをジッと見てしまう。


「ふふ、その反応だ。冷徹なアサシンであるお前の心を揺らすための事実だ。クリード、これを機に学びな……アサシンは、ただ殺すだけじゃない」

「…………俺も、変わらなきゃいけないのか?」

「ああ。新しい時代が始まる。長きにわたるアサシンと騎士団の戦いが終わったからね」

「…………とりあえず、次の任務」

「ああ。用意してあるよ。とある地方国家の要人警護だ。ふふ、かわいいお姫様の護衛は得意だろう?」

「…………まさか、このためにこんな任務を?」

「ああ。護衛任務、楽しかっただろう?」

「…………はぁぁぁ」


 クリードは、大きなため息を吐いた。

 ちなみに、地方国家の要人が六歳のお姫様とはまだ知らない。


 ◇◇◇◇◇◇


 クリードは、寮の荷物をまとめ終えた。

 一応は休学という扱いになっている。だが、もう戻ることはないだろう。

 片付けを手伝ってくれたマルセイとトウゴは言う。


「はぁ~あ。クリード、行っちまうのか……寂しくなるぜ」

「ホントっスよ……はぁあ」

「お前たちには世話になった。これ、少ないけど」


 と、金貨の袋を渡そうとして───少し考える。


「…………いや、野暮だな。二人に食事をごちそうする。食堂で好きなのを頼んでいい」

「へへ、わかってんじゃん。金貨差し出したらぶん殴ってるところだ」

「そうっスよ。友達ですし!」

「……ああ」


 マルセイとトウゴは食堂へ向かう。

 クリードは、最後の確認をすべく部屋へ残った。

 そこに、レオンハルトとルーシアが現れる。


「オレらは、引き続きラスピルの護衛だ」

「閃光騎士団。大丈夫だと思うけど、まだ不安だしね」

「……そうか」

「ああ。あとは任せろ。それと……オレ、ラスピルにフラれちまったようだ」

「は?」

「うふふ。レオンハルト、ラスピルに告白したのよ。でもラスピル、断っちゃったんだぁ~♪」


 ルーシアがレオンハルトを小突く。

 そして、レオンハルトはクリードの肩を叩いた。


「ま。別にいいさ、今は護衛が忙しいからな」

「ふふ、負け惜しみっぽいし」

「うるさい。じゃあクリード、また」

「ああ。二人とも、感謝する」


 レオンハルトとルーシアは、手を振って部屋を出た。


 ◇◇◇◇◇◇


 それから、クリードは学園を休学した。

 アサシン教団に戻り、地方国家の要人警護をすることになる。

 それから一年後───要人警護を終え、アサシン教団に戻ったクリードは、新たな任務を受けて、再びジェノバ王国へ向かうことになる。

 マリアテレサは、にっこり笑っていた。


「クリード。ジェノバ王国にはアサシン教団と閃光騎士団の融合組織『フラッシュエッジ』の支部がある。まずはそこに向かえ」

「了解」

「それと、この任務が終わったら、三人で食事をしよう」

「…………任務なら」

「やれやれ、そういうところは変わらんな」


 クリードは、ジェノバ王国へ向かう。

 フラッシュエッジへ向かう前に、腹ごしらえをすることにした。

 クリードは、すぐ近くにあった露店へ向かう。そこでは、肉串が売っていた。


「すまん、串焼き「串焼き! ください!」……」


 誰かが割り込んで来た───そして、既視感。

 肉串を買い、クリードにそっと手渡すのは、第三王女ラスピルだった。


「久しぶり! ふふ、懐かしいね」

「…………」


 肉串を受け取り、齧る……塩気が効いていた。

 ラスピルは、クリードの手を取って歩きだす。


「フラッシュエッジでしょ?」

「!?」

「ふふ。マリアテレサさんからお手紙もらってるよ。『息子をよろしく』って」

「……はぁ」

「ちなみに、フラッシュエッジの支部長はリステルお姉さまなの。あ、大丈夫。お姉さま、今すごく頑張ってるから。私、王女になったけど、ここにこうして来れるの、ラミエルお姉さまのおかげなんだ」

「……仕事は?」

「はい! では、支部長代理として命令します! アサシン・クリードくん。あなたの最初の仕事は……私と一緒に町を回ることです!」


 ラスピルは、ビシッと指を立てる。

 ふと、気がついた。近くのカフェに友達と談笑するルーシアが座っていた。さらにラスピルの背後にはレオンハルトがいる。護衛はばっちりのようだ。

 クリードを見て、レオンハルトとルーシアはにっこり笑う。


「さ、行こ!」

「…………」

「あれれ、不満だった?」


 ラスピルは、ちょっと不安げにクリードを見た。

 だが、クリードは首を振る。


「仕事だからな」


 そう言って、ラスピルと一緒に歩きだす。

 アサシン・クリードの新しい任務が始まった。


 ─完─

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アサシンズガーディアン・スクールライフ さとう @satou5832

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