次の停車駅は

「いや~助かりましたよお客サン! 人間だからって萩に置いてこなくてよかったでさぁ!」

「ははは……冗談きついよ車掌さん」

 妖怪列車は予定よりも少しだけ遅れて長崎駅を発車した。それでも遅れを最小限に抑えられたということで車掌さんは上機嫌だ。

「あ、そういえばカノン」

「どうしたの?」

 翔太はふと、さっき疑問に思ったことを思い出して聞いてみることにした。

「幽霊と妖怪って違うの? どこまでが幽霊でどこまでが妖怪なの?」

 さっきのタマシイの塊は人間のタマシイと妖怪が混ざったもので、妖怪が見える翔太にもその姿は見えていた。でも人間のタマシイは幽霊なんだから、翔太は幽霊も見えることになっちゃうよね。

「難しい質問ね。そもそも未練のないタマシイは成仏していなくなっちゃうから、それなりの理由がないと幽霊にはならないんじゃないかしら。でも幽霊の中には妖怪扱いされるものもいて……例えば船を沈めようとしてくる船幽霊、毎晩お皿を数える皿数え、とかね。いずれにしてもタマシイが強い意志を持って実体化してしまうと妖怪になってしまうのかもね。実体化したものであれば翔太にも見えるんじゃないかな?」

 カノンの説明を、翔太はいつになく真剣な眼差しで聞いていた。その目はカノンではなくて、もっと遠くのものを見つめているような……。

(ってことはもしかしたらどこかでお母さんに会えるかもしれないんだ……)

 翔太は黙って外を眺める。列車はすぐにトンネルに入って何も見えなくなった。

「え~、大変長らくおまたせいたしやした~! それではまた次の停車駅をお伝えさせていただきやすね~! 次の停車駅はぁ――」

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ブルートレインあやかし号 前花しずく @shizuku_maehana

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