不思議な夢

「たった今、不思議な夢を見たんだ」

 ベッドに横たわりながら、来斗らいとは呟いた。

 ここは病院の一室。来斗には酸素チューブや、様々な点滴が付いていた。

 もうすぐ面会終了の時間になるところだ。

「来斗、目が覚めたの!?」

 帰り支度を整えていた朱里あかりは、両目を見開いた。

「それだけじゃないよ」

 来斗は自分で酸素チューブを外した。 

「見てよ。僕は歩けるようになったんだ」

 来斗は包帯だらけの足をベッドに掛ける。降りようとしているのだろう。

 朱里は息を呑んだ。

 来斗の両足は頼りない。

 しかし、震えながら立っていた。

 朱里はカバンを落として、来斗に抱き着く。

 カバンから学生証や化粧品などが床に散乱されると同時に、来斗はベッドに押し倒された。

「あの……」

「良かった、本当に良かった! 事故に遭ってずっと意識がなかった時には、もうダメかもと思った。本当に良かった!」

 来斗が頬を赤らめるのにお構いなしで、朱里は声をあげて泣いていた。

「神様っているんだね!」

「……そうだな」

「神様、これからも来斗を守ってね!」

 結局、来斗は不思議な夢の話はできなかったが、幸せを感じていた。

 ほんの少しの寂しさを胸に残しつつ。

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月の形、大きな力 今晩葉ミチル @konmitiru123

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