第6話 暗殺者SASAKI

 皐月が帰った後、早速ゲームをすることにした。今日のタイトルは「ファンタジアフリーダム」通称ファンフリだ。このゲームは中世ヨーロッパ世界をモチーフにしたVRMMORPGである。プレイヤーはドラゴンやゴブリンなどのモンスターを倒し、レベルを上げ、仲間を集めながら魔王を倒す旅に出る。それがコンセプトだ。このゲームはタイトルの通り自由度が高く様々な職業ジョブが選択できる。また、ステータスの割り振りやスキル、称号の取得なども自由に行える。また、料理や建物も完成度が高くまさに第2の生活が送れるということで話題性のあるゲームなのだ。この男がこのゲームをやるということはPKも可能である。しかし、見つかるとそのプレイヤーはPKマークがつき一定のペナルティを受ける。死んだ場合も同様にデスペナルティがあり所持金、素材のそれぞれの3分の1をドロップし、装備を全ロストする。なかなかの鬼畜要素だ。


「さあさあ今日も降り立ってまいりました。ファンフリ。さて、今日はどいつからやろうかしら。」


 白い髪、赤い目、片角しかない黒い鬼の仮面、黒いローブに腰の短剣、まるで悪役のような姿をしているのがこのゲームのSASAKIである。彼のメインジョブは暗殺者、サブジョブは爆弾魔ボマーである。ステータスは攻撃力と速さに全振り、彼曰く「当たらなければいいじゃない。」だそうだ。


 中世の美しい街をでて森の中に入る。ラジオンの森というらしい。この森は大型モンスター「ラジオン」の生息地らしい。「ラジオン」とは通称雷獣ともいわれており雷を操る狼だ。なぜここに彼が来たのか、それはこのラジオンを狩るためではない。リア充を狩る下準備だ。爆発草が取れるのだ。爆弾を作るのに必要な素材であり彼の好きな草である。


「どこにあるかなー。」


 あたりを歩き回っているとすぐにモンスターとエンカウントする。ゴブリンだ。比較的弱い部類の魔物だが統率されると厄介になる。今、目の前にいるのは3体と初心者であれば苦戦することだろう。


 グギャギャギャ


 ギャギャ


 ゴブリンたちが棍棒を持ち飛び掛かってくる。しかしSASAKIは動かない。もうあと3歩程度の距離だ。そして彼は座り込んだ。胡坐で。


 グギャ?


 ギャギャ


 ゴブリンも困惑しながらも殴り続けている。実際の世界だったら気絶するぐらいで殴っているはずなのにSASAKIは動じない。そしてSASAKIはこうつぶやいた。


「そろそろ来ないかな。まだ来ないか。」


 ゴブリンも殴るのが疲れたぐらいで音声が聞こえた。


「称号≪ドM≫を手に入れました。」


「ちげえよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」


 彼はついに腰についている短剣でゴブリンを切り裂いてしまった。


「あぁぁあ、やっちまったよぉぉぉ。痛覚耐性よこせよぉぉぉ。」


 そういいながら彼は、≪ドM≫の詳細を見る。


 ≪ドM≫

 痛みを快楽に変換する。


「いやつええじゃんかよぉぉぉ。もっと名前どうにかしろや。」


 それはそうだ。なぜなら彼のレベルは85、ゴブリンはレベル6なのである。現実世界で例えるならば子供に殴られてるぐらいだ。ちなみに殴られている間、彼が少し興奮していたのは彼の名誉のために黙っておこう。


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対リア充殲滅兵器SASAKI 百葉箱 @sunbox85

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