第四話
「こっちね」
光と影が交互に入れ替わる森の中で、猫耳が、ピク、ピク、と動き。ときどき、クル、クル、と左右に転じ。
――何かを探していた。
金髪碧眼少女――リンダを先頭にし、集団は、辺りを警戒しながら慎重に進んでいく。
――森林戦。
それは、精神極限状態で闘うという、こと。
大小規模を問わずに、作戦会議を行ったとしても、予測が不可能な事態が生じる。
困難な戦場の象徴の一つ。
多くの樹木の幹や葉が障害物なり、敵味方に対しの視認が難しく。それが、闘う者たちに、無条件にストレスを与えていく。
いまは、自分たち以外の班が、森の中に入っていないので同士討ちになることは、まず、ない。
ので、一安心。
だだし、伏撃や罠を仕掛けるのに適しおり、あわせて、危険生物が襲っているシチュエーションなので、油断禁物。
しかし、
あの、猫耳カチューシャ。
目標が発する音波を捉える、パッシブ・ソナーだったとは。恐れ入ります、異世界の発明品。
猫耳という、かわいらしい外見ですが。これが猫の聴覚と等しいのならば、音源定位能力は、トップクラスに入る代物を作り出せるだけの文明レヴェルで、ありながら。
デザインセンスも高レヴェル、
の、世界。
戦場に持っていったら、ダメ、な、ヤツ、だ――癒やされます。
これ!
先頭はリンダさん、で。それに続いて、レオノーレさんが、約一メートル離れそれを維持しながら追従し。エルシリアさんは、レオノーレよりも少し間隔を空け、二メートル離れて追従します。
ぼく、は。エルシリアさんと付かれ離れずの距離で、最後尾、
リンダさん、から、ぼくまで、縦一列で進行しています。
これを
この縦隊の最大の利点は、指揮伝達能力速度、です。
最前線にいる兵員から最後尾にいる兵員が一列に整列させることで、指揮伝達が容易であり、情報混乱が生じにくいのです。
最前線にいる兵員が、危険を感知した瞬間、ハンドサイン、一つで、チームは危険だと意識することができます。
その逆も。
最後尾にいる兵員が前方の兵員に、予め決められた箇所をタッチをするだけで、後方、敵兵、追跡、注意、場合より散開して逃げろ、囮は任せろ。などの情報を伝えることができます。
このちょっとした。連携が出来るか、出来ないか、でゲームなら勝敗――戦争なら生死に直結してきます。
彼女たち各自の力量も素晴らしいですが、やはり只者ではありません、ね。
人の集まりのパーティー、ではなく。連帯責任を果たせる補完的なスキルを備えた少人数の集合体である、チーム。
まさしく、部隊それも精鋭。
あの空賊たちが人海戦術で、負けた意味が、よく理解できます。群れて勝てるほど、あまくない相手。
とはいえ、
空賊狩りの仕事を邪魔したにも、関わらずに、殿、と呼ばれる重大な役割を任命するのは、
殿とは。
本隊の後退行動の際に敵に本隊に背後から迫ってくる、敵の追撃を阻止し、本隊の後退を
何の変哲もないない、命を賭けた囮のことです。
この殿は、古来より武芸や人格に優れた者が務める大役とされています。名誉あることであり、信頼されているという意味でもあります。
だって、
信頼できない者に背後を見せるのは、敵兵、相手に戦っているよりも、危険で仕方ありません。
無防備な背後から――えい! って簡単に殺されてしまいますから。
若干一名を除いて、信頼を得た証拠でしょうか――ぼく。
リンダさんは、“しゃー”と鳴きながら猛反対してました、が。多数決には、勝てませんでした。レオノーレさん、と、エルシリアさんは、賛成票を投じたのです。
ぼくには、選挙権(投票権)はありません。平凡な十六歳なので――選挙は二十歳になってから――ぁ――十八歳に引き下げられました。
二十歳だろうが十八歳だろうが、十六歳のぼくには、権利はないです。
“しゃー”、から、“きしゃー”と鳴き声が変化していましたが、決定が覆ることはありませんでした。
が、
八つ当たりをされました――ぼく、リンダさんに。
しかしながら。
彼女たちは、ぼくが知っている女性たちと、同類のようで。口より先に手が出るタイプようです。
荒事を仕事にしているので。口より先に手が出るのは、必須になってしまうのは仕方ありません。
ぁ! そろそろ、狩りの開始みたいです。
狩りをするのは――ぼく、です。
仕事の邪魔をしてしまった、罪滅ぼし、と、して。
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神神の微笑。流離譚-火之夜編- 八五三(はちごさん) @futatsume358
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