最終章・明日を探して

レイダ登場


5 - 1

ぼけーっと歩いたり伸びしたりしてる


ジン登場


ジ「おい、レーダ」


レ「…ジン」


ジ「お前、なんで帰らねぇって言った」


レイダ、黙る


ジ「俺があんなに言ってやったのに……。ま、帰る帰らねぇはこの際どーでもいい。けどそれで泣かせるのは違うだろ」


レ「誰を」


ジ「エルギアだよ」


レ「エルギアが?」


ジ「そうだっつってんだろ。あん時も言ったがな、あいつはお前を帰らせるために奮闘してた。それはあいつが勝手にやったことだ。それでも、少しは気持ち分かってやってもいーんじゃねえのか」


レ「あいつは自分の過去と、イチカや僕を重ねてるんだろ」


ジ「…そうだな」


レ「いくらなんでも重ねすぎだ。それじゃ、もし僕とエルギアの境遇が違ってたら、助けてなかったってことだろ」


ジ「そういうわけじゃねぇだろ」


レ「分かんないじゃないか!!そんなの…」


ジ「そうだよ、分かんねぇんだよ!!分かんねぇんだから、そうやって決めつけることもできねぇ!エルギアは、自分と似てたからじゃねぇ、お前だから助けたのかもしれねぇだろ!!」


レ「意味が分からないよ…」


ジ「強制はしねぇ。元々、俺自身はお前のことなんかどーでもいいからな」


レ「君はそういう奴だよな、知ってる。けど、どうしてそこまでしてエルギアに協力するんだ」


ジ「後輩が泣くほど悩んでるから。ただそれだけだ。俺は、自分の生死は自分で決めるもん、己で決まるもんだと思ってるからな」


レ「…そうか」


ジ「俺は戦国の世で育ち、戦場いくさばを駆けてた人間だ。他人に自分の生死を決められちゃあたまんねぇよ」


レ「それじゃあ、そんな考えになるのも頷けるな」


ジ「けど、帰るって選択肢を頭に入れとくのもいいと思うぜ。それとも、お前そんなにここで死にてぇのかよ」


レ「…どうせ帰ったってすぐ死ぬんだ。だったら、病室で管に繋がれて苦しんで死ぬよりも、ここで体が自由に動くままで死んだ方が何倍もいいっ…!!」


5 - 2

イチカ、喋りながら登場

イ「それ、本気で言ってるんですか」


同時↓

ジ「イチ…!」


レ「イチカ…!?どうして、帰ったはずじゃ」


イ「ジンさんに協力していただきました。貴方一人を残して帰るなんてしません。言ったでしょう、貴方が必要だって」


レ「イチカ…」


イ「私は貴方から希望をもらった。でも、くれた貴方には、希望がない。…そんなの、悲しいじゃないですか」


レ「悲しくはないよ。君に希望を与えられたならよかった。管理人として、これほどまでに嬉しいことはない」


イ「…ジンさんに連れて行かれた後、ジンさんは『あの男を救えるのはお前とエルギアだ。俺は何もしてやれない』と言って、私を帰さないでいてくれました。それから今までずっと、私はレイダさんの過去を調べさせていただいてたんです」


レ「僕の、過去って…」


イ「現世でのことも、ロゼアーネに来てからのことも、全部です。レイダさん、私より前に来た人全員、現世に送り出してるんですね」


レ「そう、だね。みんないい子だから、返してあげたかった」


イ「それなら、エルギアさんの気持ち、分かるんじゃないですか」


レ「エルギアの、気持ちって…」


イ「エルギアさんもレイダさんも、大切な誰かに帰って欲しいと言う気持ちは同じなはずです。エルギアさんもその気持ちを、貴方に持ってるんですよ」


ジ「エルギア呼んできてやる」


ジンはける


5 - 3


ジンを見ながら

レ「え、あ…」


イ「それでもまだ貴方は、ここを人生の終点にするつもりですか」


レ「そのつもりでは…いたけどね」


イ「貴方が帰らずにここで人生を終わらせるのなら、私もここで終わらせます。私の命も、貴方が持っているんです。レイダさん」


レ「そんな、大切なものは…僕に持たせちゃ駄目だ。すぐに壊してしまう」


イ「私、生きていてもしょうがないって、ずっと思ってました。でも、レイダさんが、仲間って言ってくれたから…少し、希望が持てた。だから私が今後生きていく世界には、レイダさんが必要なんです」


レ「でも戻ったらイチカのことも全部忘れてしまうんだよ?」


イ「それでもいいんです。生きていてくれるだけでいいんです」


レ「……イチカ、変わったよね」


イ「レイダさんが希望をくれたからです。行き場のない、生きる意味もない、こんな私に」


黙るレイダ


イ「希望をくれた人が死んだら、それこそ自分が死にたくなるくらい、悲しいに決まってます。それは、貴方が一番よく分かってるはずです」


レ「それは…」


イ「レイダさんにとっての希望がミスズさんだったように、私にとっての希望はレイダさんなんです。だから、生きてください。貴方が、貴方自身のために生きたくないと言うのなら…。私のために、生きてください」


レ「ふっ、ははは………そう来たかぁ……。今までたくさんのことを言われてきたけど、今のが一番しっくり来た気がするよ。他人のために生きるなんて…考えたこともなかったな。…うん、そうだね。もう少しだけ、なら。……生きてみるのも、悪くないかもしれないね」


イ「レイダさん…!」



5 - 4

エルギア、走りながら登場

エ「レイダ!!!」


レ「あ…エル、ギア」


ジン、後から歩いて登場

ジ「いい加減仲直りしろよ、お前ら」


レ「……ごめん、この前はほっといてとか、言っちゃって…」


エ「あ、いや…オレにも悪いところはあったし…」


レ「そうだとしても…ごめん」


エ「えっ」


レ「みんな、僕一人が帰るためだけにたくさんのことを考えてくれたんだよね。それは分かってたのに…」


エ「謝んないでよ…!勝手にやったことではあるし、オレもレイダの気持ち、考えてなかったから。…ごめん」


ジ「ったく、謝ってばっかだなお前ら…一番大事なのが抜けてんだろうが!!」


エ「だ、大事なの…?」


レ「えっと…」


ジ「あぁもう!!!ありがとうだろ!!礼すら言えねぇのかお前らは!?なぁ、イチ」


イ「え、あ、そう…ですね…?」


エルギア、レイダ、黙ってお互いを見る


エ「レイダ、」


レ「エルギア、」


エ、レ「「今までありがとう」」


ジ「よかったな、イチ」


イ「はい、ジンさんのおかげです。あのとき、私を帰さないでいてくれたから」


ジ「はっ、そうでもしねぇとお互い不幸だろ」


イ「本当に感謝してます、ありがとうございました。…ジンさん、何もしてやれないって言ってましたけど、そんなことないじゃないですか」


ジ「は?」


イ「ミスズさんからの手紙、わざわざ天界まで行って書いてもらったんですよね」


ジ「な!?おま、なんでそれ知って」


イ「そうかな、って思っただけですよ。いつ書いてもらったんですか?」


ジ「もうだいぶ前だ。エルギアが、あの娘さえいれば…って言ってたからよ。けど、素直に渡してやるのも癪でな」


イ「やきもちですか?」


ジ「………。え、は???」


イ「ジンさん、エルギアさんのこと大切に思ってますよね。でも、エルギアさんはレイダさんでいっぱいじゃないですか。だから妬いてるのかなって」


ジ「はっ…!?馬鹿か!!この俺が!!あいつなんかに!!妬くわけねぇだろうが!!」


イ「ははっ」


ジ「おい、何笑ってんだよ!!俺は500年も先輩なんだぞ!!あぁもう…さっさと帰れ!いつまでも残ってると未練たらたらになっちまうからな」


イ「レイダさん、行きましょう」


レ「…うん」


エ「レイダ」


レ「なに?」


エ「楽しく音楽作ってよ」


レ「…うん、頑張るよ」


イ「レイダさん」


レ「どうしたの?」


イ「私たち…また会えますか?」


レ「…どうだろう」


イ「……江田川麗さん」


レ「え、それって」


イ「レイダさんの本名、ですよね。覚えていれば会えるかなって」


レ「でも、忘れちゃうんだから意味ないよ」


イ「それでも…これだけは忘れたくなくて」


レ「……そっか」


ジ「そんじゃ、別れだな」


レ「うん。みんな、本当にありがとう。みんなのおかげで、僕は生きるという選択肢をとれた」


イ「私も、この街に来たから生きようと思えました。戻ったら全部忘れちゃうけど、また一人だけど。それでも、生きていきます」


エ「うん。元気でね」


ジ「こんなとこ、もう来るんじゃねぇぞ」


イ「はい」


レ「エルギア」


エ「…はは、オレは大丈夫だよ。忘れられるのには慣れてるから」


ジ「俺たちはいつも見送る側だからな」


エ「うん」


ジ「じゃあな、達者で」


レ「イチカ、行こう」


イ「はい!」


イチカ、レイダ、はける


5 - 5

エ「……はぁ、行っちゃったね」


ジ「だな」


エ「よかった…ほんとに…。…でも、やっぱりいざとなると寂しいな」


ジ「なぁお前、あいつのこと、なんで助けたんだ?自分と似てたからだけか?」


エ「え…ははっ、違うよ。レイダ…ううん、江田川麗っていう、一人の人間だったからだよ。麗だから、助けたいと思った」


ジ「はっ、そうかよ。……はぁ〜〜〜〜あ…これじゃ、早く次の管理人を見つけねぇとな」


エ「あ、そうじゃん。今いる人間の中で一番滞在歴長い人って誰だっけ?」


ジ「お前、俺が分かると思ってんのか?(ため息)…にしてもよぉ、そろそろ新しい悪魔よこせって感じだよな。人手が足りねぇ」


エ「悪魔になる奴がそんなにいたら困るでしょ…」


ジ「いやいそうじゃねぇ?悪魔になるのって、他人から悪意とか恨みを受けまくった奴だろ?」


エ「だからいすぎたら困るんだけどね…」


ジ「あー………めんどくせぇことは後にすっか!たまってる仕事やっちまおーぜ」


ジン、喋りながらはけだす


エ「めんどくせぇって…そっちが言ったくせに…!俺もやらなきゃだけど!」


エルギアも後を追いかけるようにはける



5 - 6

イチカ、レイダ登場

二人とも私服

(着替えが難しいようなら、衣装の上からパーカーやコートを羽織るだけでも)


セリフはなし。ジェスチャー。

雨が降っていて、折りたたみ傘を差しているイチカ。公園みたいな場所を歩いている。

上手から出てきて下手に向かって歩いている。

レイダは普通の大きな傘を差し、下手から上手に向かって歩いている。


すれ違い様、イチカがハンカチを落とす。

それをレイダが拾って手渡す。

レイダはそのまま歩いていってしまうが、

イチカは立ち止まって一度振り返る。

そしてまた歩き出して舞台上には誰もいなくなる。

その後もずっとBGMは続いていて、最後に全員出てきて、お辞儀して終わり。


イチカは折りたたみ傘だから顔が見えるけど、レイダは大きな傘で顔が隠れていて見えない。

観客にレイダなのかどうかの想像は任せる。


Fin

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Time・Fortuna 緋川ミカゲ @akagawamikage

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