【第十六話】ドーバー・シブリス ①

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァァアアアアアアアアア!!どうやら、ワシの相手はお前ということらしいなァァアアアア!!スパイル・ラーチェスッ!!」



隣で恭司とビスが戦う中、ドーバーは完全に視点をスパイルへと変え、戦闘に移っていた。


1対1の状況が2つ作られた形だが、勿論、文句なんてない。


なんせ、ここにいる全員が、協調性皆無な個人重視の人間ばかりだったからだ。


ここには個性と主義主張の激しすぎる人間しかいない。


全員が望まないのだから、この状況はむしろ、誰にとっても都合の良いものだった。


他人との連携だの協力だの、そんなことが必要…………いや、そもそも"出来る"人間は、ここには1人もいないのだ。


だから、


この状況になることを、誰も邪魔立てなんてしたりしなかった。


誰しもが望んでいたから自然とそうなったのだ。


望み通りの展開で、皆満足している。


そう、


"スパイル以外"は。



「ハハッ、まぁ、そうなるかねェ……?俺としては、アンタみたいに"厄介"な奴とはやり合いたくなかったんだが……」



スパイルはそう言って、1人苦虫を噛み潰したような顔をした。


あの『戦闘狂』であるはずの、スパイル・ラーチェスが、だ。


いつも強敵との戦いを望んでいるはずのスパイルが、自分よりもランキング上位のドーバー相手に燃えていない。


それを見て、ドーバーは嫌らしく笑った。



「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……ッ!!厄介と言ったかッ!!そうか、厄介ときたかッ!!まぁ、そうだろうなァ……ッ!?貴様は無駄に賢いッ!!おそらくは、ちゃんと気付いているんだろう!?」


「……ッ!!何がだよッ!!」



ドーバーの挑発に乗って、スパイルは口から炎を吐き出した。


爪から生成するより高密度で高温で破壊的な必殺技が、ドーバーに向けてまっすぐに向かう。


だが、


ドーバーはそれを難なく避けてしまった。


いくら威力が強かろうと速かろうと、こんな何も仕掛けのない状態でドーバー相手では、当たり前のことだ。


スパイルは今、明らかに冷静さを失っている。



「何故って……?」



ドーバーは避けた瞬間に凄まじい速度でスパイルに近づくと、円月刀を上から振り下ろした。


スパイルはそれを長爪で受ける。


パワーと殺意の乗った重い一撃ーー。


ガキィィィィィンと金属同士のぶつかり合う音が響く中、スパイルは力づくでドーバーを振り払った。


ドーバーは後ろに吹き飛ばされるが、空中で猫のようにフワリと受け身を取り、何事もなく着地する。


そして、


またしてもニヤァァァァァァと嫌らしく笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー ノリオ @tommyto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ