【第十五話】鋼鉄山 ⑨

「フフフフ、ハハハハ……、ハァーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!良いねェ!!熱いッ!!熱いゾォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!俺はこういう展開を待っていたんだッ!!滾って滾って仕方がねぇ!!興奮し過ぎておっ勃っちまいそうだッ!!もう我慢なんて出来るかよッ!!」



正に三つ巴の状況だった。


ドーバーや恭司に続き、ビスすらもが強烈な殺気を放ってきたのだ。


恭司にもドーバーにも劣らない、恐ろしく強大な殺意の本流が巻き起こり、3人の間で空気がバチバチと弾け飛ぶ。


誰も引かないし、引かせないーー。


全員敵なら、容赦の必要もないのだ。


近衛隊長かNo.3か王族狩りかは知らないが、気に食わないならただ一つ。


殺せばいいーー。


気の済むままに、ただただ暴れて殺し尽くせばいいーー。


皆考えることは同じだ。


ビスもドーバーも恭司も、それを盛大に表して隠さなかった。


どうせ、他には誰も見ていないのだ。


同盟だろうと仇じゃなかろうと、そんなことはもう彼らには関係ない。


スパイルはそんな状況にやれやれと肩を竦めると、恭司に続いて前に出た。



「ハハッ……。なんか、止めたりして悪かったな……。どうやら仲良くお喋りなんて空気でも無さそうだし、今のは俺らしくなかったよ……。こうなっちまったら、ここはもう戦場だ。ここはもう……ッ!!ド派手に行くとするかァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」



すると、


スパイルはドーバーとビスに向けて、炎の槍をそれぞれ放った。


槍状の炎が両者をまっすぐに襲い、ドーバーとビスは、それぞれで難なく避ける。


だが、


そこに、恭司が避けた瞬間を狙って襲い掛かった。



「ビィィイイイイイイイイイイイイイイス・ヨルゲンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンッ!!」



恭司の狙いは、当然ビスだった。


"2択"なら当然だ。


他なんてあり得なかった。


怒りが憎しみが、溢れて溢れて仕方がない。


あの時は逃げるしかなかったが、今は違うのだ。


体はすこぶる快調で、技も問題なく繰り出せる。


当然、ここで全力で始末するつもりだ。


ビスもまた、それに応じた。



「ハハァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!気が合うじゃないか、三谷恭司ィィイイイイイイイイイイイイイイッ!!いいぞォォォォ……ッ!?俺もお前とやらないと……ッ!!気が済まなかった所だからなァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



ビスはナイフで恭司の斬撃を受けつつ、大量のナイフを展開した。


何百何千のナイフが宙を飛び交い、ビスは足をその上に置く。


相変わらずの空中戦法で、超能力者ーー。


空中にナイフを無限に展開できる、正にチートのような超絶的異能力。


ビスはナイフの上に乗って宙を自在に動き回りながら、即座にナイフの嵐を降らせた。


全力にして全開ーー。


ここで手加減も出し惜しみもあり得ない。


その数は1,000だろうか?


10,000だろうか……?


分かるのは、"数え切れない"ということだけだ。


ホワイトウッドを前にして膨大なナイフ群が空間を占領し、恭司はそれらを風や斬撃で吹き飛ばす。


あの時には披露できなかった、恭司の本当の力だ。


あの時の屈辱を、倍にして返すチャンスーー。


恭司もまた、風と斬撃を容赦なくビスに繰り出し、引き裂く風の乱舞を巻き起こした。


こうしてーー


ビスと恭司の戦いは、始まりの時を迎えたのだ。


日本国が滅ぼされて以来、2人が万全の状態でやり合うのは、これが初めてとなる。


そして、


その隣では、


ディオラス人同士の、"一桁クラス"の激突が繰り広げられていた。

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