【第十五話】鋼鉄山 ⑧

「ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉう?お前があの有名な『王族狩り』だなァ……?部下からこの憎っくきミッドカオスめらを散々苦しめてやった功労者だと聞いている。本当なら、今すぐにでもディオラスに勧誘したいくらいだぞ」



ドーバーは恭司の質問に答えず、余裕綽々にそう話してきた。


しかし、


そこに横から、予想外のストップが掛かる。



「おいおいおいおいおいおい、待てよ、クソジジイ……。ボケたのか何なのかは知らねぇが……この俺の前で何ふざけたこと抜かしてんだぁぁぁぁぁぁ?流石に今のは聞き捨てならねェぞ……。こいつらの前に、まずはお前からブチ殺してやろうか?」



ドーバーの言葉に反応したのは、恭司ではなくビスだった。


ビスはもはや恭司やスパイルよりもドーバーに視線を向け、殺気を隠すこともなく、盛大に露わにしている。


戦る気満々ということだ。


そして、


ドーバーもまた、それに応じた。



「ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉう……?ミッドカオスの駄犬がよう吠えよるわ……。ミッドカオスにはマナーというものがないのか……?まずは年長者を敬う所から出直してこい、若造」


「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!敬えだってッ!?こんな枯れ木みたいなジジイをどう敬えと言うんだ!?ディオラスではよっぽど人材が不足しているらしいなァ……ッ!?こんな過去の遺物が未だにNo.3の座にいるなどと……ッ!!ずいぶんッ!!笑わせてくれるじゃないかッ!!」



ビスとドーバーは、恭司とスパイルをよそ目に、既に一触即発の雰囲気だった。


今はたまたま手を組んでいるとはいえ、元々つい最近まで敵国で、どうせこの戦争後はすぐにでも争い合うことになる間柄なのだ。


一時的な同盟など、取り立てて仲良くする相手には値しない。


しかし、


恭司はそんな2人を見て我慢ならないのか、苛つき気味に口を開いた。



「貴様ら……一体どういう了見でこの俺を無視している……。俺は、お前らが何の目的でここに来たのかと……ッ!!そう聞いているんだッ!!」



恭司からもまた、凄まじい殺気が放たれた。


ドーバーの殺気を跳ね返すほどーー。


空気の密度が上がったようにすら感じられるほどーー。


鬼のように冷徹で冷えた殺意が、空気を揺らし、侵蝕する。


ドーバーの殺気とぶつかり合ったそれは、ドーバー自身の気位をも触発した。


互いにぶつけ合った殺気は益々密度を深め、もはや景色が歪むほどに感情がぶつかり合っている。


そこに、


ビスもまた楽しそうな顔をして、呼応した。

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