第4話 約束
シャラン。
喫茶店のドアが開いた合図である。(今日はいつもより到着が少し早い、家に戻らずそのままこちらへ向かったのか・・・。)麻里が時計を確認すると時間は三時を回ったところだった。
「わぁ焼きたてだ!僕、このクッキーこのまえ初めて食べたけど、すごく好き」
しかしそんな気分屋な到着さえも分かっていましたといわんばかりにクッキーがちょうど焼きあがっていた。チョコチップとオートミールがふんだんに使われているごろごろとした食感が楽しいクッキーだ。
三樹がカウンターに両手を載せて目を輝かせている。
「三樹君、いらっしゃいませ。今日はランドセル置いてこなかったんですね」
麻里の一言にほんの少し三樹の表情が陰る。何か思い出したくなことを思い出したかのような、家に帰って気づかれてしまうことを恐れているような、周りへの配慮からくる寂しい影だった。そして、そういうときほど三樹は笑う。並みの大人ではそんなかすかなざわめきも吹き飛ばされてしまうような、天真爛漫な笑顔で。
「うん、今日は体育があったからお腹すいちゃって家まで我慢できなかった!おやつが早く食べたいなぁって。あといつものココ・・・ア」
三樹がいい終わらないうちに、麻里は三樹の前にクッキーと濃厚なココアを並べた。麻里の手品のような接客は、何度経験しても心が躍るがそれもずいぶんと慣れてきた。それもそのはず、三樹はティザンヌに初めてきた次の日からこうして学校終わりに通いついめていたのだ。最初はマーロに会いに来ていたのだが、今は麻里にその日あった出来事や、最近読んだ面白い本の話など、他愛もない話を聞いてもらうことがすっかり習慣になっている。ココアも無料だし、約束にはなかったがこうしてたまにおやつもある。そして何より、門をくぐった先の空気、肺一杯に香る様々なハーブの匂いが落ち着くのだった。暖かいマグカップを両手で持ってゆっくりと飲む。麻里のココアは不思議なほどに身体が温まる。生乳が贅沢に使用されていて舌触りがずっしりととろけるような、そして鼻を抜ける特別な香りを三樹は気に入っていた。今日も至福の一口をゆっくり堪能していた。
麻里は休むことなく再びやかんを火にかけている。三樹が不思議そうに見つめる。いつもおやつと会話を楽しんだ後、一緒に庭に出てハーブを摘んだり低木の剪定したり、摘み取った花やハーブをまとめたりするのが日課なのだ。三樹も簡単な作業や手元などは進んで手伝う。「三樹君がいると作業がはかどって助かります。」と麻里がいつも褒めてくれるので、お店にもとても通いやすかった。
「麻里さん今日のお手伝いはお庭じゃないの?僕にも手伝えることある?」
三樹が声をかけると、麻里は優しく微笑んで「それじゃぁ」と透明のラッピング袋と赤い留め具とクッキーの大皿を三樹の前に置いた。
「こちらの三枚のラッピング袋にクッキーを入るだけたくさん詰めてください。」
麻里に頼まれた三樹は張り切ってクッキーを割らないように一枚一枚丁寧に袋へ詰める。あっという間にクッキーでぱんぱんになった袋を並べると、麻里が用意していたお湯がちょうど沸きあがった。気づけばカウンターにティーカップとマグカップの二つが用意されている。シャラン。店内のドアが開くと
「麻里さんこんにちはー」
中の様子を窺うように入ってきたのは、千香と誠司だった。
「あぁーやっぱり三樹ここにいた!」
千香がほっと安心したように肩を下ろしながら三樹の隣に座った。
「麻里さん三樹君、こんにちは。今回はすぐに見つかってよかった」
誠司も苦笑を浮かべながら一番近いカウンターに座る。
「お姉ちゃん、探偵さん一緒にどうしたの?」
三樹はなんとなくばつが悪そうな様子だ。心配かけたことを気にしているのだろう。そんな三樹を姉の千香がちらりと盗み見たが、気づかぬふりなのか
「別に、なかなか帰ってこないからもしかしてマーロに会いに行ってるのかな?って思っただけ」
あっけらかんと答える。
「なにいってるんですか。千香さん、三樹君の事すごく心配してたじゃないですか」
やれやれ、素直じゃない・・・といった様子で誠司は顔を背けながらつぶやく。
「ちょ、ちょっと!余計な事は言わないでよ。」「あれ、すみません。もしかして声に出ちゃっていましたか」誠司の話を聞いた三樹は、顔を赤くする千香をなだめながら嬉しそうな表情を浮かべていた。
「誠司さん千香ちゃん、いらっしゃいませ。なんだか前回より、お二人がずっと仲良くなってて羨ましいです」
麻里が、千香と誠司の前にマグカップとティーカップを置く。三樹がずっと気になっていたコップ達だった。二人はそろって「どこが!!!」と仲良く答えていた。
「ふふふ、前回と同じハーブティーとココアがちょうど今出来上がったので、よかったらどうぞ。」
待ってましたと心の中で歓喜する誠司、千香も嬉しそうにお礼をいっている。誠司はハーブティーをゆっくり口まで運び堪能する。血流にのって体中にハーブの香りがいきわたるような感覚をかみしめる。このお店は本当に不思議だ、あの門をくぐってからは特に心身が軽快だ。とはいえ身体は麻里のハーブティーのおかげでしばらく好調だったので、きっと心が落ち着いてより軽く感じたのだろう。誠司はハーブティーに浮かれて、麻里の完璧なタイミングを見過ごしていたが、三樹はしっかり覚えていた。”まるで麻里さんは二人が来ることが、ずっと前からわかっていたみたいだった・・・。やっぱり麻里さんって本当に・・・”三樹は心の声を最後まで言葉に起こせなかった、身震いがおきて背筋が伸びたからだった。
三樹が麻里を見上げるとちょうど二人の目が合う、麻里は千香と誠司の喜ぶ様子に満足したとでもいうように三樹に微笑んだ。その温かい陽だまりのような笑顔に三樹は確信した。”でも麻里さんはきっといい魔女だ!”窓際で昼寝をしていたマーロは今日も我関せずとでも言いたげに大きく伸びをしている。その首には前回はなかった首輪がつけられていた。シャララン。
翌日学校の帰り道、三樹は麻里からお土産でもらったクッキーをポケットの中に隠して歩いていた。「三樹くんの大切なお友達にもよかったら食べさせてあげてみてください」麻里の笑顔と言葉が思い浮かぶ。”大切な友達・・・”ポケットの中でクッキーを掴む手に力が入る。すると、後ろから三樹を呼ぶ声と足音が聞こえてきた。
「おーい、三樹くーん」
三樹の同級生で同じマンションに住む、
「昨日は一緒に帰ろうって呼びに行ったらもういなくて、だから今日はまっすぐ下駄箱に向かったら三樹君の背中が見えたんだ。よかったぁ、一緒に帰ろう。」
よほど急いで追いかけてきたのだろう、優成の嬉しそうな表情とは裏腹に肩は大きく上下していた。そして、このすれ違いは偶然ではない。三樹はわざと優成を避けるようにしていたい、優成も三樹に避けられていることに気づいていないわけではなかった。それでもこうなる理由を優成が三樹本人に聞かないのは、互いに互いの気持ちがわかっていたからだ。わかったうえで、優成は毎日三樹と一緒にいようと努めた。優成の懸命さを目の前にして三樹がなんとも思わないわけもなく、ポケットの中からクッキーを取り出して、優勢に渡した。
「このクッキーすごくおいしいから、あげるよ。」
突然のクッキー出現に驚いた優成だったが、三樹の手からクッキーを受け取ると「ええいいの?ありがとう。それじゃあ、一緒に食べようよ。」と素直に喜んだ。久しぶりに三樹と帰れることも、三樹の精一杯の気持ちも優成は心から嬉しかった。そして三樹もティザンヌ通いの効果か、久しぶりに優成と一緒に過ごせて嬉しかった。こんな感覚は久しぶりだ。”明日、麻里さんにお礼を言いに行こう!”と三樹が考えていると突然
「おい見ろよ!三樹と優成が校則違反してるぞ」
目の前に優成とは別の同級生三人組が立ちはだかった。体の差異はほとんどないが、あの威張り散らしたような態度やそれにつき従う後ろの二人のせいで、三樹や優成より一回り大きく感じる。同じく同じマンションに住む
その後ろを優成がおびえるようについていく。三樹の反応がいつも面白くない光は、いつかあの生意気な三樹の眉間に皺ひとつ刻ませてやりたいと常々思っていた。そして今日、名案が思い浮かんだ。そういう時は標的を変えてみたらいいのではないか。三樹のようなタイプには本人に嫌がらせをするより、友達を狙った方がいい。光はにやりとほくそ笑むと、優成のランドセルを後ろから強引につかんで
「おいおい優成、お前いつまでこんなやつと一緒にいるんだよ。あんなやつほっといて俺たちと帰ろうぜ。クッキーなんて持ち歩いて女みたいだぜ!だっせー。」
光の暴言に再び後ろの二人が騒ぎ立てる「うわ、しかもこれ手作りじゃん」「クッキーも買えない貧乏神だー貧乏が移るぞー」後から追いついてきた下校中の生徒がちらほら増えてきたが、みんなこの件には関わりたくなさそうに大きく避けている。みんな自分さえよければいいのだ、いや自分が狙われないようにするだけで精いっぱいなのだ。そしてそれは致し方ない現実なのだ。三樹には、光の魂胆がすぐに分かった。大きくため息をつくと足を止めて振り振り返る。
「や、やめてよ!僕は三樹くんと帰りたいんだ。僕の友達は三樹くんなんだ」
優成が肩を声を震わせて光に抵抗していた。ほとんど泣いているに近い。それでもしっかりと光を捉える目線には力強いものを感じた。三樹も優成もクラスではほとんど目立たない。優しいなどと先生やクラスの女子生徒は口をそろえて言うが、ただ気が弱いだけだろうと光は見下していた。優成に限っては運動も勉強も目立つタイプではない。言葉を選ばなければ根っからのいじめの標的タイプだ。それに比べると三樹は、運動も勉強もそつなくこなした。”そばに置いておくには悪くない。でもあのいけ好かない態度が気に入らねえ。見下していいのは俺の方だろうが”呆れて振り返る三樹の視線だけで、光はどうしようもなく怒りが湧き上がる。そもそも、三樹には母親がいない。小学生なら、ただそれだけで普通の家庭の俺たちより下のはずじゃないか。それなのに、この二人の態度といったらまったく自分の立場をわきまえていない。光は憎しみを拳の中に強く握る。三樹に素通りされたことだってむかつくのに、今日は優成に反抗されるてたまったもんではない。握った拳をそのまま優成に向けた時
「わかったよ。明日から優成とは帰らない。やっぱり優成も僕なんかと一緒にいないほうがいい。面倒な奴に構われるから。」
光の狙い通り珍しく三樹が反応してきた。しかも素直に友達をやめると言っている。作戦が上手くいったのだ光の喜びが片方の口角に現れてにやりと笑う。
「だせーと言えば、猫が怖いだっせー奴もいたよな?」
三樹がわざと馬鹿にしような口調で光を挑発する。喜びから怒りの感情のふり幅でとうとう我慢の限界をむかえた光は「は?俺は猫が怖いんじゃねぇ!ただのアレルギーだ。この野郎!!!」と、優成を投げ捨て三樹に殴りかかる。三樹が一目散に逃げだすとその後を追うように三人もあっという間に消えていった。
「三樹くん・・・。」
光たちに解放された優成はその場に座り込んで四人の背中が消えた方向を眺めることしかできなかった。
金曜日の夕飯といえばカレーに限る。千香はカレーのルーと特売の鶏のもも肉を満足げにエコバックに引っ提げて帰っていた。昨日ティザンヌに行ったら予想通り三樹がいて、麻里さんからいつも三樹がマーロに会いに来ているという報告を受けた。”そうか!やっぱり三樹はマーロがいなくて寂しかっただけだったんだ”マーロに会いに来たついでに、麻里さんのお手伝いもしているというし、その様子を聞くかぎりだと、三樹のことは自分の杞憂だったとすっかり安心していた。今までの肩の荷が下りて足取りも軽やかだ。それに昨日、麻里からもらったお土産は三樹のクッキーだけではなかった。お店の庭園で採れたバラ、ローズマリー、はちみつの三点セットの入浴剤をもらったのだ。
「このハーブ達のほかに、浴槽に好きなオイルをたらして入ってみて下さい。きっと今までの疲れも全部消えてお肌もつるつるになりますよ。余っている牛乳があったらそちらもぜひ。」
と言われたので早速、昨晩試してみた。修也も三樹も、はちみつや牛乳という響きだけで怯えていたので、遠慮なく一人で満喫させてもらっていた。そして、久しぶりに自分のための時間を堪能して余裕のある千香だったから、彼に気づけたのだろう。スーパーの近くの小さなさびれた公園のベンチに座る、小学生の男の子。いつか三樹に友達だと紹介された同じマンションに住む、河野優成だ。
普段だったら夕飯の支度や学校の準備、つい昨日までは三樹のことでも頭が一杯で一目散に家に帰路していたことだろう。優成の手に麻里からもらったお土産のクッキーが握りしめられているなんて到底気づかない。千香は家路につく足を止めると、優成の元へと向かった。
「こんにちは、優成君。」
千香が声をかけると優成は「こ、こんにちは」と立ち上がって挨拶を返した。千香は「座っていい?」と確認しながら優成の隣に座る。優成もうなずいて静かに再び腰を下ろす。ふわりと千香からはちみつのようなミルクのような、甘くて優しい香りが漂う。不思議と優成の強張った肩の力が少しだけ抜けた。小学生の下校時間内ではあっても、冬が近づいてきているこの時期は日が落ちるのも早く、じっとしていると肌寒い。それでも優成がこうしてここにいるのは、なんとなく三樹が関係しているのだろうと、両手に包まれていえるクッキーを見て千香は確信した。
「こうしてずっと座ってるとおしり冷たくならない?」
「はい、大丈夫です。」
「そっか、ならよかった。」
千香の問いに答える優成の返事は明らかに元気がなかった。”ただの友人との喧嘩ってわけじゃなさそうだなぁ・・・”千香は三樹が家族のひいき目なしに優しいということはもちろん、優成がとても心優しい少年だということも痛いくらいに知っていた。千香や三樹の母親が入退院を繰り返していた一、二年前から、優成は三樹を気にかけ、よく遊びに連れ出してくれていたのだ。そんな優成自身も、母親が家を飛び出し父親と二人で生活していたということもあって、時にお互いに寄り添い支えあっていたのだろう。幼くして寂しい想いを体験した優成が三樹に優しく接する姿をみる度に、自分もしっかりしなくては。と感じずにはいられなかったものだ。聞く人が聞けば、寂しい少年同士で傷の舐めあいをしていると捉えられても仕方ないかもしれないし実際にそうだったのかもしれないが、千香の瞳に映る二人は、もっと純粋にそしてたくましく支えあっていた。そして三樹にこういった存在があることにすごく感謝もしていたし、千香も励みになっていたのだ。
「最近、遊びに来ないから本当は気になっていたんだけどね、三樹に聞いても全然答えてくれなくて。でも、そのクッキー三樹からでしょ?昨日もらったんだけどね、三樹の大好物なの。いつまでも全然食べないし、ずっと大事そうに取っておいてるからどうしたんだろう、って思ってたんだけど・・・。そっか優成君にあげたかったんだね!そっかそっか。」
千香はどこかほっとしたように、そしてそれがすごく嬉しいことのかのように微笑んだ。優成はしばらく静かにしていたが、小さく肩が震えはじめると、その肩一杯に抱えていた感情がぽつりぽつりと肩からこぼれ始めるように話し出した。
「ぼ、ぼ・・・くは、三樹君に嫌われるようなことをしちゃったんです。」
一度こぼれたはじめた感情は、次第に勢いがついて心が氾濫でもしているかのように止まらなくなった。
「実は半年前に僕のお母さんが突然帰ってきたんです。お父さんから、仲直りして家に帰ってくるって話は聞いていたけど、三樹くんにはずっと言えなくて・・・」
半年前というと、ちょうど千香と三樹の母が亡くなった時期だった。
「だって、三樹くんはすごく辛いのに、僕はこんなに嬉しいなんて裏切ってるみたいで。なんて言ったらいいかわからなくてずっと黙ってたんです。それに、お母さんの顔を見たら嬉しい気持ちと僕を突然出て行かれた時の寂しい気持ちがぐちゃぐちゃになって、この気持ちを人にどう説明したらいいか分からなくて。でもそんなこと三樹くんに相談できなくて。だって・・・三樹くんは・・・。」
ここで一度、優成がはっ、と千香の表情を確認する。母親を亡くしたのは三樹だけではないことを思い出したのだ。年上の千香にまで気を遣っている。この年にしては不憫にすら感じてしまう優成の優しさだ。千香は優しく頭をなでて「大丈夫。続きを聞かせて。」とその手にありったけの愛情を込めた。伊達に”お姉ちゃん”をやってきていないし、弟とおなじ歳の少年が、とても複雑な心情を抱えている。子供一人で抱えられるものではないはずなのに…。千香の温かい手に安心した優成は再び話し始める。
「・・・きっと心のどこかで三樹くんのこと信じてなかったのかもしれない。裏切者って言われるかもしれないって思ってたんです。そしてこの前の遠足の日、三樹くんと一緒にお弁当を食べてたら同じクラスの光くん達がきて、光くん達はいつも僕たちのこと馬鹿にするんだけど、三樹くんは気にしなくていいっていつも平気な顔してて、でも、その日の僕のお弁当は、お母さんが作ってくれたからいつもより少し豪華で・・・光くんは、光くんのお母さんが僕のお母さんとマンションで話したから帰ってきてたのを知ってて、だから、それで・・・。貧乏弁当とか、もう三樹と一緒にいないほうがいいって一緒にいたら貧乏と不幸がうつるって・・・僕、まだちゃんと話せてなかったから三樹くんの顔を見るのが怖くて、いつもなら三樹くんがほっとこおうって言ってくれるんだけど。その日は三樹くんも何も言わなくて。本当は僕が!その日だけは、絶対に!僕が言い返さなくちゃいけなかったのに、どうしようどうしようって何も言えなくて。帰り道も話しかける勇気がなくて。その日からずっと、三樹くんには避けられているんです。ちゃんと話して謝ろうって思ってるんだけど、一緒に帰ってもくれないし遊びに誘っても断られてばっかりで。嫌われても仕方ないと思ってたけど・・・」
すべて話し終わった優成の声色に残っていたのは諦めの一色のようにも感じる。しかし、クッキーを握る両手はまだ力強かった。
「優成くん。話してくれて三樹のこと本当に大切に想ってくれて、どうもありがとう。ずっと辛かったよね。怒ってるかもって話しかけるのも怖かったと思うのに、たくさん頑張ってくれたんだね。だけどあともう少しだけ…」
千香は優成の両手に自分の両手を重ねて二人でクッキーを包みこんだ。自分にも言い聞かせるように、少しでもこの気持ちが優成に届くように両手と言葉に少し力を込める。
「三樹のこと、もう少しだけ信じて待っててくれる?」
「……はい、もちろんです!」
千香は優成との約束とは別に、大事な弟とこんなに優しい友達を決して不幸にはさせないと、自分自身にも固く約束をした。
魔女と猫とハーブティーと 焼菓子のタネ @1907190618
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