道はふたつ

@soratobe

第1話

秋の訪れを知らせるような夕方の風が頬を撫でる。


僕は今日、振られた。

その理由は嫌いになったからではないらしい。どうやら、僕と彼女は合わなかったらしい。生きてきた世界が違うみたいだ。そんなこと気にしないのに。彼女は彼女自身を下に見過ぎている。僕にないものを彼女は持っている。それは生まれつきのもので、どんなに努力しても手に入らないもの。それなのにどうして、そんなにも自信が持てないのだろう。どうして、どうしてこんなことになってしまったのだろう。僕は別れたくなかった。でも、僕の存在が、僕といることで、彼女が苦しんでしまうのなら仕方がないのかな。


大きく息を吸いながら、真っ暗な空を見上げた。真っ暗な中に何かを探したが、見つからなかった。自転車は僕の歩くスピードに合わせて隣を歩いてくれた。アスファルトをゆっくりと踏みしめるタイヤの音が空気に消えていく。今夜は長くなりそうだ。

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