第33話まあばあちゃんと就職活動の娘さん

まあばあちゃんとトモちゃんは、二人でニュースを見ていました。政治の事や事件のことなどいろんなことがテレビ画面に移されます。


話は就職活動をする学生さんに移りました。大学生の娘さんがしっかりとした口調でインタビューに答えていました。


まあばあちゃんの娘時代は現在の日本と違って、自由というものがなかなかなかったのです。


子どもは親の教えに従って生きていかなければなりません。特にお父さんの力は絶大で、お母さんが意見を言うなんて事は考えられません。


お母さんがほんの少し我が子にこうして欲しいと思っても、それは心の中にしまって、お父さんの言うとおりに生きるものなのです。まあばあちゃんの家もそうでした。


“子どものためにこうしてほしい、ああしてあげたい”と思っても、まあばあちゃんのお母さんの希望が通ることはなかなかありません。だから、まあばあちゃんは上の学校にはいっていません。


“女に勉強は必要ない”


お父さんにそう言われたからです。でもそれは、まあばあちゃんだけではありません。まあばあちゃんのお友達も同じだったのです。


「本当は家が貧しくて、女の子を学校へ行かす余裕なんてなかったのよ。そういう時代だったのよ」


まあばあちゃんは、眩しそうにテレビの中の娘さん達を見ました。


『いい会社に入って、世の中に役立つ人になりたい』


娘さんはインタビューに、爽やかな笑顔で答えていました。


「今の若い人はいいねぇ、はきはきしていて。今は本当に良い世の中になったわ。女の子がしっかり思っていることを言える時代なんだもの。


それは素晴らしいことなのよ。勉強だって自由に出来るんだから。勉強出来るって、とっても幸せなのよ。きっと、この女学生さんは良い生き方をしていくと思うわ」


まあばあちゃんは屈託のない笑顔で、テレビで就職活動をする女子学生さん達に「がんばってね」と心の中で応援していました。

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堺の町のまあばあちゃん まりも @marimo8877

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