不思議な後輩と関わり、異変が起き始める
闇野ゆかい
第1話後輩の男子と放課後の会話
7月に入り、数日後には夏休みを控えたある日の放課後。
エアコンはすでにきられて、噴き出してくる汗で服がはりついて気持ち悪い。
教室には私以外誰も居ない。全開に開けられた窓から風がかすかに入ってくるだけ。
椅子から立ち上がり、帰宅してシャワーで汗を流したい。しかし、なぜなのかわからないが、立ち上がる気が起きない。
「せーんぱいっ、顔をあげてくださいよ」
突然聞こえた声に驚いて、視線を机から正面に向けると、男子がいた。
足音一つ聞いていない。恐怖を感じた私は、声を出すことができない。
「やっと顔をあげてくれた。先輩は今まで不思議な、怖い体験なんかしませんでした?」
優しい声で訊ねてくる彼は、後ろで手を組み、前のめりになりながら顔を近づける。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い──。
彼は、私を先輩と呼んだが彼とは面識がない。校内で見かけたことは一度もない。見かけたら忘れないほどイケメンな彼なのに、記憶の片隅にもない。異性の後輩とは数人ほどしか関わりがない。その内の一人に彼は、一致しない。
「ない......けど」
「怯えてますか?先輩らしくない、後輩に怯えるような方ではないでしょ」
笑顔を浮かべているが、人間の──この世のモノではないと感じる彼の笑顔。
彼は、本当に後輩なのか。もしかして──。
「こちら側の人間です。先輩が思ってるような存在ではけっしてありません。今日はこの辺にします。さようなら、先輩」
彼は、言い終わると扉に向かって歩き出す。彼の姿は教室から見えなくなると、椅子から立ち上がることができた。
窓を閉めることを忘れ、急いで帰宅した。
不思議な後輩と関わり、異変が起き始める 闇野ゆかい @kouyann
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