「生きる理由」を探し続けるJKの日常

月時雨

1.JK、ぼっちになる

「玲、もう関わってこないで」

今朝おはようと挨拶を交わした友人はそう言い放った。

――何を言われたのか理解できない。

彼女は背を向け去ろうとする。

「待っ......」

思考を巡らせる間もなく行ってしまった。

――嘘だ。

現実を受け止められない。

いや、受け止めたくないだけかもしれない。

衝撃的な言葉だった。

理由も分からず理不尽で唐突な別れに泣き崩れる私。

私はいつも通り一緒に帰りたかっただけなのに、

くだらない話をしながらバス停まで歩きたかっただけなのに、

ただ、「帰ろう」と言っただけなのに。

私の日常は親友の冷淡な言葉で壊された。

閑散とした教室に一人。

ふと黒板に目をやる。

そういえば当番だった......

「窓、閉めなきゃ」

一旦落ち着いて窓を閉め、電気を消して教室を出た。


──────


「はぁ......」

重い足取りでバス停へと向かう。

――冷たい。

大きな雫が首元に落ちてきた。

「傘、忘れた......」

あまり濡れたくない。

――はぁはぁと息切れをさせながら屋根の下のベンチに座る。

バスが来るまであと二十分ほど余裕がある。

雨は強くなり周りの声も聞こえない。

空を見上げる。

こんな日に限って天気予報が外れるなんて。

むしろこの雨は私の気持ちを代弁してくれている唯一の理解者だとさえ思う。

そんなに思い悩むことでもないのかもしれないと思ったりする。

雨なのに少し気分が晴れた。

唯一の友人だからだろうか、

今まで彼女がいたところにぽっかりと大きな穴が開いている。

虚無感が襲ってきた。

いっそぼっちでも良いんじゃないかな......

そういうこともあると割り切る心も大切なんじゃないかと、

私は開き直った。


──────


今日、私は初めて学校を休んだ。

この頃熱を伴う感染症が流行っていて、

親には熱が出たと嘘をついて学校に電話してもらった。

別に風邪を引いたわけでもない。

彼女のことも朝起きたら気にしなくなっていた。

私は薄情なのだろうか。

ただ学校に行くのが面倒なだけだ。

一応熱を計っておくか。

――ガチャ。

「大丈夫 ?」

「部屋に入るときはノックしてって言ったじゃん」

「ごめんね。体調はどう」

「まだ少し熱があるから今日は寝ておくよ」

「担任の先生には連絡しておいたからね。大人しくしておくようにね」

「うん......」

母は心配そうに出て行った。

布団の下から体温計を取り出す。

母が入ってきたことに驚いて咄嗟に隠したが、

本気で心配しているようだったので罪悪感を感じた。

「明日は行くかぁ」

絶対行かない奴のセリフだ。

――彼女はどうしてるかな。

いや、考えるな。

私が原因でいじめられていたのかもしれないし、

これ以上関わるのはやめようと思った。

彼女とは小学校の頃からの親友で毎日一緒に帰っていた。

だから、別れることがこんなにも簡単だと思わなかった。

一生会えないわけじゃない。

昨日は機嫌が悪かったのかもしれない。

それでもメンタルの弱い私はこんなにも臆病で、

二度と顔を合わせることもできないだろう。

そんな自分が悔しい。

明日から必ず何かしよう。

曖昧な目標と共に、私は成長すると決めた。




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