第4話 女神の祝福


 ————俺は死んだのか。


 想像よりも悪くない最期人生だった。


 愛されながら殺されるってヤツ、世の中にはそういないはずだ。俺には一切その気が無かったのは残念な点ではある。


「やっとお目覚め?」


「き、キミは……?」


「アタシは神様。図が高いわ。跪けや人間」


 高圧的な態度をとる女性は自らを神と自称した。明らかに俺よりも年齢は下だ。幼い顔立ちをしている。これまたやべぇ女が現れたようだ。


「はいはい、神様が何の御用ですか?」


 ごっこ遊びに付き合ってやろうじゃないか。


「まずは、アタシを敬うべき象徴として脚にキスなさい」


 純白に光る椅子に座る彼女は右脚を宙に遊ばせた。


「何を言ってるんだ?」


「アタシの言うことが聞けないのなら、このままアナタを殺してあげるけど」


「わかりましたよ」


 俺は彼女に近づき、脚に触れる。


「そうそう、疑問なんて持たず、ただアタシの言うことを聞けばいいのよ」


 少しだけ手に力を入れると柔らかな感触が跳ね返ってきた。と、同時に「んっ」という吐息が彼女の唇から漏れ出た。


 本当にキスをするべきか、彼女の顔を窺うと妖艶の笑みを浮かべて俺をじっと見つめていた。その眼差しからは、人間には到底理解出来ない感情が含まている気がして、神という言葉に誤りが無いと確信に変わった。


 傷ひとつない女神の脚に顔を近づける。毛穴が一切見えず、ロボットではないかと疑えるほどだった。


 女神が早くしろと言わんばかりに脚をほんの少し上にあげる。


 俺は覚悟を決めて、そっと唇で脚に触れた。


 その瞬間、視界が大きく傾いて俺は床に倒れてしまった。


「―———契約成立ね」


 だんだんと意識が遠退く中、ケラケラと笑う女神の声だけがハッキリと聞こえた。




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ヒロイン無双~狂気のアリスを回避せよ~ 四志・零御・フォーファウンド @lalvandad123

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