第1話.少年の願いごと①
息がきれながらも、重蔵は肺が凍える中必死で走っていた。やっとの思いで見つけた希望だった。少年は嘘か本当か分からない噂を頼りにカクシカ便棟の前まで来ていた。もし本当なら花子さんに願いを叶えてもらえる。
少年は小さな階段をゆっくりと降りていく。体は冬の寒さで凍えているというのに、胸の鼓動がどくどくと熱くなるのを感じた。景観は不思議なお店だった。階段を降りると薄暗い入口にもかかわらず、入口の窓からはステンドガラスから透き通るカラフルな色が漏れている。今までの寒さを忘れられるくらいに綺麗で暖かい雰囲気を出した喫茶店だった。ここになら花子さんがいるかもしれないー。
カランカラン
ドアを開けると、コーヒーの匂いと共にあったかい風が吹いてきた。なんだか、落ち着く、そんな感情に不思議と納得できる場所だった。暖かい光を木の内装が優しく包み込む。小さなコーヒー店ではあったが、店内がゆったりと時間を感じさせ無い雰囲気のせいか窮屈感は感じない。
「あのう、花子さんがいる喫茶店は、カクシカ便棟であっていますか?」
昔の深みを感じる雰囲気にここには花子さんがいるだろうと不思議と納得できた。
20代前半ぐらいに見える女性はゆっくりと微笑み、返事をした。
「はい」
喫茶店の花子さん てんぷら @Urash
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