喫茶店の花子さん

てんぷら

プロローグ

人影のない道の奥に物静かな看板を掲げた喫茶店がある。その奥には地下へつづく自然石でできた小さな階段があり、降りると昔ながらのレトロな雰囲気の喫茶店があった。


この喫茶店には古くから続くある噂があった。

この喫茶店には気まぐれな花子さんがいて、コーヒーが冷めるまでの間に、花子さんの悩みごとを一つ解決してあげると、お礼に願いを叶えてくれる。

けれど、そこには花子さんらしい気まぐれなルールがあった。


1つ、花子さんは喫茶店のトイレの3つ目に住んでいる。ノックは3回。

「花子さん、花子さん悩みの入ったコーヒーを1杯くれませんか?」と聞き、コーヒーを入れてくれた時にだけ叶えてもらえる。

2つ、願いごとは一人一つである。

3つ、花子さんは毎日いるわけではない。

4つ、花子さんのお悩みを解決してあげなければ願いを叶えない。

5つ、寿命や生命に関わることは願えない。

6つ、花子さんは狐の仮面をつけていて、素顔を見られると消えてしまう。だから、決して見てはいけない。

7つ、この喫茶店の中でのことでしか叶えてもらえない。


このようなめんどくさいルールがあるにもかかわらず、物好きお客さんは今日も来ていた。


階段を降りる足音がすると、カランカランとドアをゆっくりと開ける音が聞こえる。

今日は、学生服を着たの男の子のようだ。

男の子は戸惑いながらも、ゆっくりと入り、

「花子さんがいる喫茶店は、カクシカ便棟であってますか?」

おっとりとした美沙子はゆっくりと微笑み、「はい」と答えた。

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