作品の外でチャンスを逃す事

 以前、作品への感想を書く側・読む側の双方の立場から思う事を書きました。

https://kakuyomu.jp/works/16816452218321983797/episodes/16816452219030657440

https://kakuyomu.jp/works/16816452218321983797/episodes/16816452219030657440

 端的に思い返すと、

 感想を書く側としては、

「酷評は赤の他人のモチベーションと言う、背負わなくて良い責任を背負う羽目になるかも知れませんよ」

 感想を受ける側としては、

「意図を誤解されたからと言って、相手に腹を立てたり嫌味を言っても損ですよ」

 と言う結論に至ったかと覚えております。

 

 特に後者。

 前回も述べたと思いますが、私自身はそれで読むのを止めた作品が結構あります。

 前回挙げた20年前の事例については、まだSNSと言うものがなく、個人がウェブサイト(ホームページ)を所有して発信していた時代でした。

 ご近所付き合い的な惰性もあって、嫌な思いをしてからも結構な期間、嫌々読み続けたとは思うのですが、近年では、作品の外から余計な雑念をもらった時点で直ちに止めるようになったと思います。(※1) 

 腹が立つだとか、作者が嫌いになったと言う事ではなく、予期せず批難されたり塩対応を食らった記憶が作品に紐付けされてしまい「純粋に作品が楽しめなくなった」と言う事です。

 どれだけ上質なフレンチのフルコースであっても、勝手にデスソースをドバドバかけられたらどうなるか、と言うのに近いかも知れません。

(時代の流れで交流の形態が変わったからなのか、あるいは私だけなのかはわかりませんが)

 逆の立場に立った時、作者も人間なので、書いたものに対する見解があまりに的外れだと苛立つ事も残念ながらあるとは思います。(※2)

 恐らく自分の内面を、他人が勝手に定義しているような、原始的な不快感がどうしても生じてしまうのかも知れません。

 とはいえ、多くの場合、相手に悪気はありません。

 苛立ちを直接的にせよ間接的にせよ、相手に気取られないように飲み込むのもマナーの一つでありましょう。

 当たり前ですが、これは市販の本ではまず起こり得ない事です。

 基本的に作者からのアクションは、作品の本文や、せいぜい後書きくらいしか無いからです。

(ファンレター等のやり取りについては、ここでは考えません)

 リアルタイムで身近に作者と読者がコミュニケーションを取れる環境と言うのは、そうした、市販の本には無かったエタる・読むのを脱落するリスクが高いと思われます。

 

 一対一のやり取りのみならず、SNSやエッセイによる“多”への発信も注意が必要でしょう。

 こちらは対象が不特定多数である為に、うっかりが起こりやすいかと思われますが。

 このカクヨムでも、プロフィールにTwitterアカウントを掲載する欄があった筈ですが……口汚い悪態だとか、偏った政治思想だとかを呟いてはいないでしょうか。

 依然、軽い気持ちの発信から想定外の炎上……と言うものも絶えない昨今。

 作品がどれだけ素晴らしい出来であったとしても、作者の嫌な内面を目の当たりにしてしまった場合、必ず見る目にバイアスが掛かってしまいます。

 このバイアスは、残念ながら、後になってどれだけ頑張ってもほとんど挽回不可能なものです。

 故に、著名人や大企業は特に“イメージ”に気を付けねばならないのです。

 近年の企業の求人活動においても、SNSをチェックする場合が多くなってきているようです。

 こと経済活動においては、素晴らしい人材を採用する事よりも、トラブルを起こす人材を回避する事の方が重要です。

 舌禍というのはトラブルメーカーを特定するのに最もわかりやすく、また、起こりがちな事でもあります。

 そんなわけで、特に書籍化や公募を狙っている方は、この点に気を付けた方が良いでしょう。

 出版もまた、他の業界と同じく「炎上リスクを第一に避けねばならない経済活動」ですから。

 仕事に賤はなく、誰にでも出来る事ではないスキルを要求されるのは、作家だけではなく他の仕事でもそうだと言う事。

 それらもまた“就職活動”と同じなのだと、私は考えます。

 首尾よく選考に挙がったとして、どこかの段階でSNSやエッセイ・創作論を見られていると思うべきでしょう。

 私も今では無闇にSNSで発言する事も無くなりましたし、コンテストなどには応募していないので、その点ではあまり関係は無いのですが、

 やはり、この創作論(例:LGBT啓発活動に対する見解)やブラック職場脱出マニュアルの存在を思うと「人間性が厄介なので選考から外そう」と判断されるのかも知れません。

 実は最近、この創作論の記事を30話くらい未公開に戻しました。

 純粋に自分の考え方が変化した為に載せ続けられなくなったり、話数が膨らんで読み返したい話を探すのが大変になってきた事情もありましたが。

 


 最後に一つ、余談であり、今回の話題を思い付いた直接のきっかけでもあるのですが。

 私はおよそ15年以上通い続けた美容院を、変えようかと考え始めています。

 この美容師は同級生の母親であり、他に強いて行く所も無かったので何となく通っていました。

 元々「歯に衣着せぬ」と言うキャラだったのですが、最近では無意味にマウントを取るような発言や、逆に私が悪気なく出した話題に予期せず噛み付かれる事が増えてきました。

 この辺は、先の感想のやり取りにそっくり置き換えられるケースかと思います。

 そして決定的な理由となったのが、事前の予約を拒否されたと言う事。

 例えば7月に予約をしたければ7月に入ってからにしてくれ、と言う事です。

 私(の家庭)とてその月の予定は、前の月から決めないといけません。

 最近は家を建てるためにハウスメーカーと打ち合わせている事も知っているはずです。

 曰く、

「あなたを後回しにしてるわけではなく、こっちもやりたい活動のために予定を空けておきたいから」

 とのこと。

 子供の同級生と言う事で甘えもあるのかも知れませんが、どう言い繕おうとも、私的な活動のために本業の仕事を後回しにしているとしか、こちらは思いません。

 私の現職の社長も言っていましたが、最も恐ろしいのは声高にクレームを入れる客ではなく、黙っていつの間にか離れていく客でしょう。

 

 どれだけ良い作品を作っても、作者への“色眼鏡”“バイアス”で読まれなくなるほど馬鹿げた事もありません。

 どうせなら、自分が力量不足だと納得した上で玉砕したいものです。

 しかし、やはり作者との距離が従来よりも近い、近年の投稿サイトでは、やはり気を付ける……というかメリハリは必要となるでしょう。


(※1)

 これには、作者のリアクションの良し悪し以前に、私固有の性分もあると思います。

 例えば好きなお店を友人の軽口で貶されて“ケチ”がつくと、もう行かなくなったりします。

 また、何度か述べてきたように、書いたり読んだりするリズムが乱れると途端に止まってしまう悪癖も持ち合わせています。

(※2)

 純文学寄りの作品で書いたつもりのものを「ジョジョで言うところの○○(名言)みたいなものですね」と言われた時は、流石に「え……何一つ合ってませんが?」とは思いました。

 しかし、思うだけで留めておきましょう。

 学校や職場、出先のお店などに置き換えれば歴然かと思います。

 また、ちゃんと真剣に読み込んでくれての感想かも知れないのは結局、誰にも否定できません。

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