ヒロイン等の属性を被らせてみる ~追放ものを自分で書き終えて~
追放もの、と言うかテンプレものに挑戦するにあたって、もうひとつの試みがありました。
複数のヒロインの属性をわざと似せる、と言うものです。
これはむしろ、「正道にテンプレものに挑戦した」本作の中において、意図したアンチテーゼと言っても良いかも知れません。
具体的にはマジクック(以下略)における“エリシャ”と“ミシェール”です。
どちらも小柄でスレンダー体型、髪も大体肩のあたりの長さ、幼さの残る面差し。
性格的にも基本的に気が強いが、脆い部分を隠せているようで隠せていない。主人公からすると若干(シャレで済む範囲の)嗜虐心をくすぐられる&同じだけの頻度で主人公が相手にいじめられるorしごかれる……と言うかなり大事な特徴を敢えて被らせました。
目的は「清楚系・高飛車なお嬢様・ボーイッシュ・年上系・おバカ天然系・ロリ」などの“記号”で分類せずとも、ヒロイン・ヒーローは差別化可能である事を証明する為でした。
一応、主人公の心情として「騎士団に所属する女はこんなのばかりか……」と言わせてもあります。
「多種多様な女が均等に分布する生態系など、死んでもあり得ない」とも悟っています。
更に、両者とも主人公の第一印象は「性格は苦手だがルックスはドストライク」=立ち振舞いも込みで外面の属性が完全に被っている ともしています。
もっとも、プロットやボリューム、そして私の労力と言うやむを得ない都合により、この両者が直接絡む事は無く、どの程度差別化出来ていたかは疑問も残ったのですが。
結果的に、単純な年齢差(主人公から見て、エリシャは同い年でミシェールは年下)や組織における立場の違いだけでも、書き分けに執着せずとも差別化は出来るのでは無いかな? と書きながら思いました。
あの子は活発で、別のあの子は大人しい! なんて差異を無理に付けずとも。
先述のシャレで済む範囲の嗜虐心一つ取っても、方や「弟に感じていた親愛と同質」で、方や「気安い関係性」と言う差異は、殊更意識せずとも出た筈です。
最初に決めた人物の立ち位置が、自動的に決めてくれる側面もあります。無論、過信は禁物ですが。
敢えて属性を被らせたヒロイン二者の原型は、
「良いドジっ子、悪いドジっ子」
https://kakuyomu.jp/works/16816452218321983797/episodes/16816700427762198695
で挙げた過去作の“テレサ”と“ミネッテ”にあるのですが、
(
常に仲間としての濃密なやり取りがあるこの二人に比べれば、今回のマジクック(以下略)におけるエリシャ&ミシェールは、更に対比の余地を取り払ったと思われます。
そう言えば当たり前にして地味な要素なのですが、髪の長さやヘアスタイルの力の入れ具合は、女性的な属性の調整をしやすい要素だと思います。近年ではこう言う事を言うと誤解を招くのも理解しておりますが、ここまでがワンセンテンスだ、宜しいか。
(※最近HUNTER×HUNTERの見過ぎです)
正直な所、私個人が「フェミニンに振り切った女性が好き」と言うのも要因の一つです。
そんな人間が、ベリーショートの髪型でタバコをスパスパ吸っている女性を書くのも難しいものです。
勿論、純粋に「カッコいい」とは思うのですが、恋愛対象として描写するのは相当厳しいものがあります。
無論、私とは真逆な感性の方は、小説的にも真逆の得手不得手を持っている事でしょう。
「男の子(女の子)の各種属性を取り揃える」と言うのは、そうした、好みでもない異性を描く義務感との戦いでもあるのかも知れません。
そこすらも欲望のまま、差異はあるけど好きなタイプだけを並べるとするなら、悩む事は無いのかも知れませんが。
エリシャとミシェールについて「そもそも年齢的・立場的な差異がある時点で別人じゃないか!」と言われると、実は反論の余地がありません。
そもそも口調と言う要素だけでも、外面的な印象には決定的な違いがあった筈なので。
そう考えると、何処から何処までが外面・内面なのか、差別化なのか……深く考え出すと頭も痛くなってきますが。
ただ言える事は、むしろ「わざと似せる」と言うハンデを先に背負ってみた方が、実は差別化させやすい事もあるのでは無いか、と言う事です。
差別化と言うものに必ずしも力を入れずとも、結果的に差別化が伴っていれば結果オーライと言うか。
本題から少しずれますが、エリシャ・ミシェールくらいの僅かな差さえも無い組み合わせで(本当に黒髪ロングの清楚系を二人とかボーイッシュ二人とかで)やってみると、より書き分けの挑戦になるかも知れません。
一見して同じ性格でも、素でやっているのと演じているのが同居していたなら、それだけでも対比は生まれますし。
この「似通わせる差異」は、勿論、同性同士などの関係性にも使えます。
友情だったり忠誠だったり、敬意だったり。ともすれば、日常の何でもない繋がりだったり。
これも、連載当時はあまり意識したわけではなかったのですが、追放パーティ側の“偽物感”と主人公が新天地で得た“本物”のそれとが、うまい具合にお互いを強化していたのではないかな? と自己評価しております。
恐らく、この「属性を被らせる」やり方の方がイレギュラーなのでしょうが、人物を書き分ける力を身に付けるには、わざと表面の属性を被らせるのも経験の一つかも知れません。
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