良質なテンプレものを目指すには“フロム脳”が鍵となる?

※一応、アーマード・コア、ダークソウル、ブラッドボーンの内容に触れるのでご注意下さい。


 やはり、作品をひとつ立ち上げると、創作論の方も捗るものです。

 作品の方で一杯一杯で、こちらの更新速度は落ちているのですが……あれも書きたいこれも書きたい、と言える状態はやはり幸せなものであります。

 

 さて「手軽にざまぁ出来て、かつ、深みのある物語を」と言う無理難題を自らに課してみて、ある一つの事柄を連想しました。

 “フロム脳”と言う作風です。

 簡単に説明すると、フロムソフトウェア社の手掛けたゲームの空気感に対する熱狂的なファン……となるでしょうか。

 その空気感と言うのは「基本的に断片的な情報を散りばめて、結論は受け手(プレイヤー)の想像に委ねる」と言うスタンスからなります。

 簡単な例えとして、豪奢な祭壇に置かれた漆黒の剣。その側には抱き合う男女の亡骸が。

 以上、他にはこれと言って説明無し。

 言われなくても、まともな剣で無い事は明白。人によっては、とっとと拾って装備したくて仕方がなくなるでしょう。

(※この例は、私が勝手に作ったものです)

 

 また例えばアーマード・コアにおいて、主人公には「親の仇を追っている」と言う背景があるのみで、本編では、自機の強化と実績を積むために淡々と任務をこなしていきます。

 そしてある時、今まで主人公に仕事を斡旋するなどバックアップしてくれていたマネージャーが「君の仇の居場所を教える」と言って、最終ステージに導きます。

 そのステージでは、ラスボスである仇が音声通信で主人公に絶えず語り掛けて来るのですが……この声が、ずっと相棒としてやってきたマネージャーと同じなのです。

 順当に考えると、仇はマネージャーだった……となる筈なのですが、断定する情報が無いため「そうでは無い他の可能性も否定できません」(だった筈です。うろ覚えで申し訳ない)

 

 別項「お約束を少しずらす」

https://kakuyomu.jp/works/16816452218321983797/episodes/16816700428468767592

 で挙げた、ブラッドボーンに出てくる“聖剣のルドウイーク”にしても「かつて、聖剣を振るうその戦士が教会勢力の祖だった」「獣の殺戮に邁進する聖職者ほど、自らもまた獣となる」と言う断片的な情報が、アイテム等の説明文にあるだけで、いざ対峙した本人は、文字通りの問答無用で襲ってくるだけです。

 そして、何だか良くわからないうちに自我を取り戻し、何だか聖剣に語り掛けてプレイヤーの知りようがない過去に思いを馳せた挙げ句、剣を構えて第二ラウンド突入。

 ダークソウルやブラッドボーンでのボスモンスターは、意味ありげな設定を帯びつつ、大体は無言で主人公に襲ってくるのです。

 

 また、ブラッドボーンにおけるもう一つの話として「不死者の血族と、それを狩る勢力との対立」があります。

 実際、不死の女王に会いに行く事も出来ますが、その直前に“殉教者ローゲリウス”と言う名の亡者が襲ってきます。

 例によって、作中に散りばめられた情報を統合すると、この男は「不死の血族を狩る勢力の長だった」事がわかります(この点は明らかに断定されています)

 しかし、封印された女王に会うには、彼を倒さねばならない。

 これでは、敵の長であるローゲリウスが女王を守っている事になってしまいます。

 さしあたり考えられる可能性としては2つ。

 自ら、死後も人柱となり、誰も懐柔されないように女王を閉じ込めている。

 あるいは、戦いの最中で女王に対して何らかの“情”が芽生えてしまい、彼女を迫害から守っている。

 どちらなのか、あるいは他の可能性によって、二つ名“殉教者”の意味合いも玉虫色に変わって来ます。

 

 よくありがちな“逃げ”としての「受け手の想像に結論を委ねる」やり方と、フロム脳とは明確な違いが感じられます。

 恐らくフロムソフトウェアのゲームのそれは「開発者の中でしっかり結論が存在する」のでは無いでしょうか。

 語ってはいないが、描写しているのです。

 何だかんだで有力な説は決まっている事が多く、整合性がきちんと取れています。

 そして、この事に思い至った時に、今書いている追放ものの執筆がかなり楽になってきました。

 確かに、ゲームなら受け手(プレイヤー)が随意に情報を集められるし、アクションゲームとして面白いのでストーリーを解明しなくても満足できる……と言う媒体の違いはあります。

 しかし、それこそ「半分眠りながら流し読みたい」人はそうすれば良く、しかし、同時に深く読み込みたい人には相応の情報が読み取れる。これを両立するには、フロム脳の手法はかなり有効なのでは、と思います。

 

 そして願わくば、眠りながら流し読むつもりが、起きてちゃんと読まざるを得ないような、そんな話にしたいものです。

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