第11話魔王様の想定外

 ダリウスは城に戻って一息をついた。

 応接間にいくとタイミングよくカロが現れた。

「お疲れ様です」

 カロはダリウスにお茶の準備をしていて優雅にお茶をティーカップに注ぎダリウスに差し出した。

「美味しい。ありがとう」

「いえ」

 ダリウスの見えない様に喜びに震えカロはガッツポーズをしていた。

 しばらく優雅な時間を満喫していた。


 ズガガーガン

 城が全体が揺れ、ダリウスとカロが一瞬床から離れ中に浮いた。

「キャー」

 それとほぼ同時にシルビアの悲鳴が城全体に響き渡る。

 ダリウスは振動が収まると静かにティーカップをテーブルの上に置いた。

 今度は何事とカロはため息をついた。



 城が揺れた原因の場所、それはシルビアの部屋のベランダ下あたりだった。

 そこを目指してダリウスは魔法陣で移動した。

 そこには尻もちをついたキュロがいた。

 来なさいといったもののこんなに早く来るとは。

 ダリウスは額に手をあて、キュロの想定外の行動にに脱力したのだった。

 最初にキュロが木をなぎ倒してできた道を猛突進できて壁に激突したのだ。

 キュロは痛いよりもかゆいだよ、かゆいだよ。

 目から涙をながし全身をかきむしっていた。

「シルビア」

「はぁーい」

 ダリウスに呼ばれて嬉しそうにシルビアは魔法陣から現れた。

「キュロに水をかけてあげてくれないか?」

「わかりました」

 ドババーーン

 加減をしらないシルビアは滝のような水をキュロの全身にかけた。

「あ!」とシルビアの行動を止めようと思ったがダリウスはキュロ本人が嬉しそうなのでまぁいいやと止めるのを止めた。

「魔王様、おらどうしちまったんだろ。毎日、全身が痒くて死にそうだぁ」

「キュロ~」

 その言葉を聞いて悲しそうな顔をしたシルビアは水を出すのを辞めてキュロの手を掴もうとしたがつかめず指をつかんだ。

「呪いだぁ。おらが悪い事したから呪いだぁ。シルビアちゃんがくばってる何かをみんな美味しそうに飲んでるからおらある日我慢できなくなって一本かってにもらっただよ。悪い事したから呪いだぁ」

 ダリウスとカロは顔を合わせて同時に大きなため息をついた。

「キュロ、それは花粉症っていうんだ・・・」

「かふんしょん⁉そんな呪いがあるだか~」

 ダリウスは再び脱力した。


「花粉症は呪いではないよ。免疫の過剰反応で」

「メンエキ?カジョウなんとか」

 ダリウスはなんとかキュロに説明しようと思うが説明する度にそんな呪いがぁととすべてに呪いのこぎつけてしまうのでどうしたものかと悩んでいた。

 そこにカロが間にはいってきた。

「キュロ、病気です。あたたたちキュプロス族がいる南にはない病気です」

 カロの極端な話にダリウスは驚いた。

「カロ?」

「南にはスギやヒノキがないんだからそうなんです。キュロにはこんな説明でいいです」

 開き直りさらにカロはキュロにいい放つ。

「一族がいる南に帰りなさい。いてもらっては迷惑です」

 ショックを受けたキュロがぶぁっはくしょんと大きなくしゃみをした。花粉症で涙を流したのかカロの言葉に涙を流したのかキュロの目から大粒の涙が出ていた。

「それから身内だからといって勝手に物をとるのは許せません。給料から牛乳瓶10本分の値段を引いておきます」

「1本分でいいのでは?」

「悪い事をしたのにそれでは罰にはならないでしょ」

 茶番劇のような事にあきれてカロは魔法陣をだしてその場から離れていった。

 キュロ~と肩をたたきシルビアはキュロを慰めたのだった。

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魔王様は静かに暮らしたい 香歌音 @rinhapakupaku

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