第3話 イメチェン

 俺は悪い奴になり、天音の恋を応援することになった。今の俺の現状を一言で表すのであればこんな感じだろう。



「うーん、どうすればいいのかなぁ?」



 どうすればいいのかと言う彼女の問い。それはどうすれば、味のしないガムである烏野鈍麻と恋仲になれるかという事だ。



「そうだね……好きな料理でも聞いてそれを作って来るとかはどう? 良妻アピールになると思うよ」

「良妻!? 私が!?」

「うん」

「で、でも……それってほぼ告白と同じなんじゃ……」

「いや、気づかないでしょ鈍麻君は」

「ああ、うん、そうかも……」



 あの鈍感が気付くはずがない。彼女もそれは今までアピールをしてきて分かっているはずだ。


「まぁ、取りあえずやってみよう! 失敗したら他の手もあるし」

「うん。頑張ってみる」



◆◆



 先生が教室に入ってきてホームルームが始まる少し前、隣の席同士の天音と鈍麻が会話を始める。天音は俺に一瞬目配らせをする。俺は頑張れと言う意思表示をするためにグッとマークを出す。


「そう言えば、私最近料理にはまってるんだ」

「へぇー、そうなのか?」

「うん、そうなの。色々作ってみたいと思ってて……」



上手い、身の上話から良い感じに料理に話を持って行っている。彼女は少し恥ずかしそうにしながらも



「それで、その一つの参考として鈍麻君の意見を聞きたくて……鈍麻君の好きな料理ってなにかな?」



っち、何と羨ましい。あの天音からそんなことを聞いてもらえるなんて。もう、これ貴方に作ってきてあげるフラグじゃなぇか。


 彼女が少し恥ずかしそうに聞くと鈍麻は考えるように腕を組む。



「フム、そうだな……フォアグラのソテーとか、黒毛和牛のステーキとか、キャビアのサーモン丼とか……」




フム、じゃねぇよ! 作れるかそんなもの!! どんだけ金がかかると思ってるんだよ! から揚げとでも言っておけ!


天音もなんて返答していいか困ってるだろうが!


「あー、うん。そっちね……じゃ、じゃあさ、お菓子! 好きなお菓子は!?」



天音が鈍麻が言った料理は作れないと判断して、ならばお菓子を作ってこようと作戦を変える。


上手い、状況判断力と素早い作戦変更、流石だ!



「ハイチュウとかじゃがりことか」

「……ああ、うん。そっか……美味しいもんね、ハイチュウ。じゃがりこも……作り方わからないけど」

「え? 何だって?」



天音のガッカリの声をいつもの難聴で流していく。くっ、しょうがないな。ここは俺が助っ人として出よう。そして、好感度を上げよう。



「鈍麻君」

「うぉ! 士道か。ビックリしたぞ」

「ごめん」

「いや、いいけど……お前イメチェンしたな。そんなレベルを超えている気がするけど……なんか悩みとかあるのか?」

「いや、ないよ。これ地毛だしね」

「ええ!? マジかよ!? お前昨日まで黒だったじゃん!!」

「雷に打たれて色が抜け落ちたんだ」

「どこぞの鬼を狩る剣士か!!」



しっかりとボケをかますことで違和感なく会話に入り込む。さらに天音に士道君はギャグセンス高いなと思わせる。そして、さらにクラスの連中にあれ? この間までのアイツと違うと思わせる……



僅かな行動にここまでの策略を考えられる俺の頭の回転の速さよ。



「えっと、話が聞こえて来たんだけど……鈍麻君は何時も高級な物を食べてるの?

「いや、偶にだけど」

「あ、そうなんだ」



知っとるわ。お前の弁当の中身毎日見てるからな。



「じゃあ、手軽に食べられて、かつ、好きな物は?」



コイツはここまで言わないと会話が成立しないからな。


「えっと、鳥のから揚げだな」

「へぇー、実は僕も好きなんだ」

「そうなのか。因みにだけどどの部位が……」

「……じゃ、そういうことで」

「ええ!? 話しきるタイミング可笑しくないか!?」



これ以上話すと隣の天音が可哀そうだからな。女子同士の会話に男が混ざりにくいように男同士の会話にも女子は混ざりにくい。さらに、遠慮する天音の事だ。ここはあっさりと身を引くに限る。



クククク、悪い奴になってからという物、俺の頭の中に次から次へと悪い奴思考が浮かぶ。


今後の作戦を考えよう。



先ず、俺は天音の故意を全力で応援する。そして、好感度を上げてニコポとナデポを発動する。だが、仮に天音と鈍麻がくっついた場合は全力で祝福をする。すると、周りは俺は何ていい奴なんだと思う事だろう。


そして、天音は他の女子に寝鳥士道は凄くいい奴と話していく。女子は噂好きだからな、閃光のような速さで噂が飛び回るだろう。


そうすれば、俺の好感度は上がりスクールカーストトップに君臨。その流れで彼女が出来て母さんも喜ぶ。

ああ、天才じゃん。俺天才じゃん。


世紀の大天才じゃん。


若干、厨二も入っている感じもするがそれは気にせず行こう。クツクツと内心で笑いながら同時に前の二人が話しているのを妬んだ俺の朝の時間は緩やかに過ぎて行った。


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モチベになるので感想、星よろしくお願いします!!!

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陰キャの俺が神からNTR特性を賜り鈍感系主人公のラブコメを蹂躙するまで 流石ユユシタ @yuyusikizitai3

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