第2話

映画館に着くと、私は川野からチケットを渡された。


「今日は何見るの?」

私は、チケット欄に書かれた作品名を見た。


「今回は、最近Twitterで話題になってる映画を観るよ。」

川野は笑顔で言った。


私も作品名を見た。『キミと刻んだ1年間』―――Twitterで「泣ける」と話題になった、超王道恋愛映画だ。


「ちなみに俺は、もう3回観た。」

「は?え、じゃあもうストーリー分かるじゃん。」

「違う違う!何回も観ることで、より作品の中に入ることができるんだよ!」

私は、ハァ、と息をついた。やっぱり川野は生粋の映画オタクだ。


「座席は、第3スクリーンのH列、7・8番目の席。そろそろ始まるし、行こう。」

川野は、ズンズンと先を歩いていく。私も、川野を追うように早足でついていった。


                  ・・・


第3スクリーンは、歩いてすぐの所にあった。

「さぁ、これからっすよ~、安西!」

川野は、すぐに席に着き、鞄の中から厚めの本を取り出した。私が集合場所に着く前に買ったであろう、映画のパンフレットだ。

私は、そんな川野をじっと見ていた。


川野は変な人間だ。

変だし、他人と違うことを平気でやってのけるし、目立ちたがり屋だし、オタクだし、なぜか私を誘うし。


………でも。


私はそんな川野のことを、「いい人間」かもしれないと思った。

性格が真逆の川野。だからこそ、私は川野を嫌な人間だとは思わない。

むしろ、興味が沸いた。


じっと、パンフレットをワクワクしながら見ている川野は…


―――とても人生を楽しく過ごしているように見えた。





そして今、静かに会場の証明が落ちた_____





「ねぇ、川野。」

映画が始まって少しして、私は隣にいる川野に小声で話しかける。

「なに?安西。」

川野は、私の方を向かずに。でも、私と同じように小声で反応してくれた。

「映画って、人を繋いでくれるのかな・・・?」

丁度、映画のスクリーンには、高校生の男子が女子に思い切って告白して、玉砕している所だった。

…それを言った事に特には意味はない。


「まだまだ、注目の映画は沢山あるよ。」

川野は、私の質問とは全く別の事を言った。

「……また、見に来るか?映画、面白いだろ?」

川野の遊び心の籠もった笑顔に、私は「うん」と答えた。



その日から、私達はちょくちょく映画に行くようになった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る