第3話
「ねぇ。」
そう声かけられたのはある日の放課後。
俺は次のテストに向け教室に残っていた日、突然ドアが開いた。
「あの、わからないところがあるんだけど。」
転校日に挨拶を交わして以来、全くと言ってもいいほど接点のなかった俺は戸惑う。
「俺じゃなくてもいつも仲良い女の子いるよね?」
俺は咄嗟に彼女に言った。
「あの子じゃなくて、、君が良いの」
「え?」
戸惑いを隠せない。どうしてこんなにも美人な彼女が俺みたいなオタクに絡むのだろう。まさか何か企んでるのではないか。
「俺も自分の勉強で余裕がないんだ。そういわれるのはとてもうれしいけれど他をあたってほしい」
少し申し訳ないという気持ちもありながらそう断った。
「ごめん。でもたぶん私が聞きたいところ、君が今解いてるところなんだよね。君が解いてるところ見るだけでもダメかな」
ここまで頼まれたら断ることもできない。
「、、、いいよ。椅子持ってきなよ」
その途端彼女はパッと笑顔になった。その笑顔が日常の綺麗な顔つきとは違い、とても幼く可愛らしい笑顔で少し胸が高鳴ったことは秘密だ。
隣に座った彼女は10分ほどじっと俺の手元を見ている。顔じゃなくても少し恥ずかしい。
「こんな俺の解き方なんて見て、わかるの?」
「うーん、、正直に言うとわからないところのほうが多いかな」
そう彼女は頭を掻きながら応えた。
ここまでみられちゃ俺にも限りがある。
「ここ、教えようか?」
最初は余裕がないと断ったものの、教えたほうが良いのかもしれないと思ったのだ。
「良いの??ありがとう!!!」
彼女は案外普通の女の子なのかもしれない。ただ見た目が美人で絡みにくいオーラがあるだけで。
それから周りが暗くなるまで2人で教室に残っていた。
「今日はほんとにありがとう。勉強だけじゃなくて学校のことも教えてもらって」
「良いよ。またわからなかったら教えるよ。1人でやるより楽しかったし」
待って。俺彼女の思い通りになってるじゃないか。まぁ別に美人な人に頼られるのも悪くない。そう思うようになっていた。
その日の帰り道、ふと庭に目をやると、リンゴの木が大きくなっていた。以前は小さな苗だったのに成長が早すぎるのではと思いはしたが、特に考えることもなく俺は足を動かした。
リンゴには姫がいる 受験生のJちゃん @ryonnnn
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