11.顧問 その1

誰が部長になるかという議論は案外すぐに決着がついた。それもそうだろう。俺以外の二人が俺を指名しているせいで、どうあがいても部長にならなければいけない雰囲気になってしまったのだから。


残りは、印鑑を除けば顧問の獲得だけだ。だがまぁ、これが難しい。

教師どもは俺の名前を聞くだけで距離を置こうとしてくる。アテは正直一人しかいない。その一人が拒めば諦めるしかないが、十中八九無理だろう。

そんな諦めの気持ちを抱きながら僅かな希望であるその教師の元に俺達は向かう。


「てことで!灰島センセ!お願いしま……」


「無理。めんどくさい」


遠野が言いきる前に灰島は拒否の返事をだす。

だろうな、という印象だ。灰島の性格上やってくれるはずがない。元々この人は極度の面倒臭がりなのだ。自分が顧問を務めている(半ば強制らしいが)部活には顔を出さないため、こいつの顧問の部活は大体半壊滅状態になるらしい。


「大体何で俺なんだよ。俺の顧問する部活なんぞ大抵壊滅するのがオチだぜ?……あぁ、そうか」


あきれ気味に頭をポリポリと掻きむしる。本人曰く何か考えているときによくする行動らしい。

少しすると、掻くのをやめてこちらを凝視してきた。


「ちょうど良い教師、一人いるぞ?」


「だ、誰ですか!?」


灰島の言葉に半ば食い気味で星宮は反応する。

その様子にフッと笑みを溢す灰島。その顔は何だか不気味で、嫌な予感が俺の体を襲った。


俺達は灰島に連れられるまま、その適任な教師の元に向かう。

おいおいマジか。いや、少し察してたが。

そこは、今日散々連れてこられた生徒指導室だった。


「お?月崎は察しがついてんのか?」


「絶対無理だぞ」


「まだ分かんないぜ」


灰島は適当にそんなことを言うと、生徒指導室のドアを開けた。

生徒指導室には、椅子の上でヘバっている花江先生の姿があった。この人、あれからずっとこの状態なのか?と感じるほどにあれから変わっていない。


「先生、コイツらが用事があるんですって」


「……!あら、どうしたの皆?……て、月崎君?」


花江先生は表情をコロコロと豹変させながら目まぐるしく反応する。その様子をみて、星宮がクスリと笑ってしまう。


「この先生、放課後は生徒指導室でいつも死んだようにヘバってるって噂だぜ」


遠野は俺達に聞こえる大きさで耳打ちしてくる。なるほど、ずっとこの体勢だった訳ではないのか。

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幾多の星、地球の片隅で。 黒崎柚月 @kurosakiyuzuki

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