第28話 裏方
3日目の朝を迎えた。昨日の朝のスパーリングで溜まった疲労が少しだけ残っていた。今日の仕事に影響がないと思いたい。
テントの外に出るとすでにみんなある程度の準備は済ませていた。それに朝食の準備をしている。今から取って少ししたら開始する感じかな。
特に準備のする必要がない俺はとりあえず時間が来るまで日課をこなした。その後朝食を取り、少しするとみんなが集まり始めてルナ姉も全員の前に立った。
「事前に伝えた通り、ここから1キロ先にあるダンジョン探索を行う。4パーティで探索し、2パーティは外で採取と警戒、1パーティは待機。それぞれ気を引き締めていこう。」
そう伝え終えると各々が準備を始めた。
事前に伝えてたことというのは、未知のダンジョン探索。それの概要といくつかのルール。ルールの方は簡単に説明すると、素材を集めるために緊急時以外は火魔法を絶対に使わないとか救出不可能と判断したものは見捨てるとか当たり前なことだった。
それでも後者の方とかはできない人の方が多いんだろうけど、、
俺もこの世界に来てから初めてファンタジー感あるシチュエーションを迎えたと思ったが、初参加であるアンジュと俺はとりあえずは採取の方に組み込まれた。
まぁ、そうだろうな、、、
そうして少しすると一斉に仕事を開始した。ちなみに1パーティあたり20人、今回は総勢で140人出そうだ。正確にはプラス俺だけど。いつもはもっと効率を上げるために人と物資を持ってくるのだそうだが、今回は未知ということもあって精鋭だけが集められた。
大企業の精鋭部隊、、、俺の平凡な人生はどこへやら、、
そうして俺たち採取グループ20+1人で東側の素材集め及び警戒を始めた。
俺のパーティは何人か一日目に話はしたがそれ以来はあまり話してない人ばかりだったため、アンジュとパーティから離れ過ぎないように行動した。
「そういえば、アンジュさんって大会に出場してたって言ってましたけど学校順位は何位だったんですか?」
「私は43位でした。ちなみにトップ50までに出場権があります。」
「それでなんでルナ姉の目に止まったんですか?」
「ステータスは他の出場選手より低かったものの技術と判断力が傍目から見てズバ抜けていたそうです。」
まぁ、言いたいことはなんとなくわかる。昨日スパーリングして俺も思った。
そう思っていると次はアンジュから疑問を問いかけてきた。
「ローラン君こそなんでルナ様の目に止まったんですか?やっぱり戦闘能力?それとも独特さとか?」
「、、え?知らないです。昔からずっと絡みがあったから?わからないけど。」
俺がそう言うとアンジュはそれを否定した。
「そんなことは絶対にないです。あのルナ様に限ってそんなことは。」
「それじゃあなんなんですかね?スキルが多いとか?知能が高いとか?」
そう聞くとアンジュは俺にステータスを見せて欲しいと言ってきたので俺はステータスを見せた。どうやらまだアンジュは鑑定が使えないらしい。
「ローラン君、凄っ!9歳でこのスキル量は異常です。それに知能もかなり高いし!おそらくルナ様がお認めになったのはそれだと思うよ。」
「そうなんですかね。」
この世界に来る前から賢く生きようとは思ってたけど流石に知能とスキルがヤバすぎたか。早く隠蔽と虚偽のスキルのレベル上げしないと、、、
そう思いながら探索していると魔物の狼20匹が俺たちの周りを囲んでいた。
これ誰がどうするんだろ?、、と考えているとパーティリーダーの男が俺に話しかけてきた。えっと、、、確か名前はゼンだっけ?一日目の俺のステータス見た人、、
「ローラン君、社長が雑魚の相手は基本的に君に任せろと仰っていたからこの狼の群れは君に任せても大丈夫かい?」
そういえば経験値がどうのこうの言ってたな、、、
「わかりました。危なくなったら手伝ってください。」
「オッケー。」
それだけ言うと俺は風魔法を使い一気に狼の群れの首を刎ねた。
そのあとすぐに俺は風魔法をもう一度使い首が下を向くように足を持ち上げた。まぁ、血抜きをする為だが、その行動を見たゼンがこちらにまた話しかけてきた。
「社長から君を自由にやらせて欲しいと言われたけどローラン君はなんでもできるんだね。」
「あっ、いえ、コレはたまたま知っていただけでして、、、」
「謙遜する必要はないよ。今みたいに魔物が出てきたらまたよろしく。」
そう言ってまた移動を続けながら採取をし始めた。
改めて見ると、なんかスゲ〜爽やかイケメンだったな。勇者というか主人公感が半端ないな。
そんなことを考えながら俺はアンジュに話を振った。
「アンジュはああいう人だったら話できそう?」
そう聞くとアンジュは俺の問いに「それはちょっと無理かなー。」と否定した。
「えっ!なんで?」
「私はなんにも気を遣わなくても大丈夫な人だけにこういう姿を見せるからね〜。ゼンさんみたいな人は逆に気を遣っちゃうよ。」
「あー。なるほど。凄く目に浮かぶよ。」
「でしょー。」
そんな雑談を続けながら採取を続けた。そうして続けているとまた魔物と遭遇しては討伐して、採取してを繰り返していると4時を過ぎた。
「今日はここまでにしよう。」
そうリーダーが言ったので俺たちはテントまで戻った。
「今日の収穫はなかなかだな!」
「待機組は異常はなかったのか?」
「ダンジョン探索でさぁー、、。」
と戻ってから各々が報告しあっていた。聞いている限りでは今日の収穫はなかなか良かったらしい。
そうして報告会議みたいなのが終わるとルナ姉は俺のところまできた。
「今日の坊主はいい仕事をしてたっていう話が出てたぜ。」
「それはどーも。猪と熊と狼の魔物の討伐は今日やったけどあんまり歯応えがある感じではなかったよ。」
「普通はもう少し年をとっている奴かもっとステータスが高い奴のセリフなんだけどな、、それ。現時点でそれが言えるのはなかなかだぞ。」
ルナ姉はそう俺を褒めてくれた。そういえば、今日アンジュと話してたことがきになるな、、、
そう思ったので俺はルナ姉に聞いてみた。
「そういえば、今日アンジュと話してたんだけど、なんで僕を連れてきたの?」
そう聞くとルナ姉は少しだけ口角が上がった。
「坊主は知識が豊富な割にまだまだ経験不足だ。戦闘センスも持ち合わせているのにその経験をさせないのは勿体ないと思ったから連れてきた。坊主はステータスこそ恵まれなかったが圧倒的なまでのセンスと知能がある。それを伸ばしてやろうと思ってな。」
どうやらなかなかの高評価みたいだな。ルナ姉の価値観がなんとなくわかった。ルナ姉は数値上の強さだけじゃなくて総合値や個人の武器を見て判断している感じだな。
そう考えているとルナ姉は俺をからかってきた。
「てかなんだ坊主、自分ができるからって自惚れてるのか?」
「そ、そういうのじゃないから!」
実際、強い人から褒められる機会かあったから確かにそうだったかも知れないけど、俺はステータスが微妙だからそういうことは絶対にないだろう。
「それじゃあな、私はまだやることあるけど早く寝るんだぞ。明日もあるからな。」
「わかったよ。」
そう言って俺は早めに休みを取った。あまり眠たくなかったので経験値を数えながら寝ることにした。
「経験値が一匹、経験値が二匹、経験値が三匹、、、、、、」
平凡な人生を送りたいので全力でモブを務める プロテクション @scandalhm
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