第4話:守護聖女

 私は王都駐屯の家臣や使用人を指揮して領地に戻りました。

 グズグズしているとドナルド国王が詫びてくるかもしれません。

 もし一国の王に土下座されたなら許さなければいけなくなってしまいます。

 関係者を全員処刑されても少しは譲歩しなければいけなくなります。

 一人息子のサイモン王太子を廃嫡幽閉までされたら許さざるを得ません。

 ほとぼりが冷めた頃に許すと分かっていてもです。


 ですが私は絶対に許したくなかったのです。

 卑劣卑怯な王太子と結婚したくないのです。

 だから急いで王都を離れました。

 急ぐあまり多少の財産が持ち出せなくても仕方ありません。

 この国の民には可哀想な事になりますが、仕方がありません。


 私は自分が一番大切で、次に家臣領民が大切なのです。

 それに私はちょっとだけ意地悪な性格なのです。

 わざわざ謝りに来るのを待ってあげようとは思いません。

 いえ、できるだけ早く王都を離れて謝れないようにします。

 こちらから許してやるような優しさはありません。


「もし王都や他の領地に友人知人がいるのなら、助けたい人がいるのなら、直ぐにレイ辺境伯家に逃げてくるように伝えなさい。

 私がこの領地を離れたら魔獣や魔蟲がこの国に襲いかかってきます。

 マッカイ王国は滅びる事になります。

 遠慮する事も躊躇う事もありません。

 助けたい者は全員助けなさい」


 私の言葉を受けて家臣や使用人達は遠慮する事無く動きました。

 大切な人達を亡国に巻き込まないように急いで動きました。

 私がこの国の領地から出ていった途端、魔獣と魔蟲がこの国を襲います。

 それが分かっているからこその最後の情です。


 私は家臣使用人と一緒にしばらく国境に留まりました。

 彼らの大切な者を死なさない為でした。

 そうでなければ国境を越えていたでしょう。

 私が国境を越えた時、マッカイ王国は滅びるのです。

 だからマッカイ王国とレイ辺境伯領の間で待ち続けました。


 家臣使用人が大切だと言った最後の一人が合流した時、私は国境を超えました。

 マッカイ王国が滅び人々が死に絶えると分かっていて、私は国境を超えました。

 私はちょっとだけ意地悪な性格なのです。

 だからマッカイ王国を滅ぼす決断ができたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

婚約破棄された守護聖女はチョットだけ意地悪 克全 @dokatu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ